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コラム・日記

高橋克徳 連載コラム 「組織と人のイノベーション」④ 2016年3月23日

第4回 イキイキ働くための経営学

今月、翔泳社より「イキイキ働くための経営学」という本を出しました。
今回は、大学院生時代、研究室で席を隣にして学んできた先輩であり、
東京理科大学大学院イノベーション研究科の同僚でもある佐々木圭吾教授と一緒に書きました。

わたしの長い間の問題意識であったのですが、経営学というものを専門にしながらも、
どこかなじめないものを感じてきました。それは、経営学が経営者や管理者のための学問であり、
彼らが達成したい組織成果のために、社員をどう効果的、効率的に動かすかに主眼が置かれていると感じてきたからでした。
「イキイキ働くための経営学」ではなく「イキイキ働かせるための経営学」、あるいは「組織成果に向けて人を動かすための経営学」というニュアンスが見え隠れすることに、どこか違和感がありました。今回、佐々木先生から一緒に本を書こうと誘われたとき、あらためて経営学という学問と向き合いたいと思いました。

私の方では特に、組織論、リーダーシップ理論、モチベーション理論について、理論的な変遷とその背景を意識して整理をしてみました。理論的変遷の事後的解釈であるという側面はぬぐえませんが、時代背景と結び付けながら理解していくと、そこに人に対する見方、仕事や組織に対する意識の変化が見て取れます。一見、多様な議論、理論が、実は一つの大きな流れの中で積み上げられてきたことがわかってきます。
同時にそのストーリーを時代変化とともに読み解けば、経営学の理論や考え方が逆に実社会に影響を与え、現象そのものを大きく変えていく貢献をしてきたこともわかります。経営学はこのように、実社会との対話を繰り返す中で、変化し、進化し続けてきた学問なのです。

こうした目線で見たとき、経営学を学ぶことには、大きく3つの意義があります。
第一に、今起きている現象をより客観的に捉えるメガネを手にすることができること。
第二に、人間観、仕事観、組織観を、自分なりに持つことができるようになること。
第三に、実社会に適用し、自分の周辺から変化を起こすことができるようになること。

ぜひ、こういった視点で、自分自身、組織全体がイキイキ働くために、経営学というものを自分の中に取り込んでみてほしいのです。
なぜ、職場の中では自分らしく振舞うことができないのか。本当に強いリーダーにならないといけないのか。人のやる気はどこから来るのか・・・。そんな疑問を読み解きながら、自分らしく、イキイキと働くために何が必要なのかを考えてみてほしいと思います。

これからの10年、20年で、人も組織も大きな転換期を迎えると思います。コンピュータ、人工知能、ロボットの進化は、多くの仕事を人間から奪うかもしれません。でも、同時に自分たちがやりたいという思いを発信すれば、人とお金を集めて自ら事を興せる時代にもなりつつあります。
自分たちが何のために働くのか、どんな幸せを追求したいのか。そういう思いをちょっとでも口にしてみる、周囲と語り合ってみる。組織という生き物を理解した上で、自分の思いを伝え、周囲の力を借りて、前に踏み出していけたら、きっと「イキイキと働く自分」と出会えるのではないでしょうか。

経営学もそういう意味では、新しい時代に向けてさらなる進化に迫られていると思います。ジェイフィールで議論してきたこと、そこから生まれてきた組織感情やリレーションシップという概念も、この本の中で未来に思考をつなぐ考え方として紹介しています。
あらためてジェイフィールがやってきたことは、人と組織をめぐる理論と実践を結びつけ、そこに変革の本質を見出し、人と組織がよりよく生きるための後押しすることだと再確認しました。これからも、経営現象を読み解く新たな視点、未来への議論の入り口を示し、経営学と実社会の橋渡しをしっかりとやっていきたいと思います。

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