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コラム・日記(片岡裕司)

片岡裕司 連載コラム 「『働く』を『幸せ』に変えるマネジメント」⑤ 2015年10月23日

このコラムでは、わたしが出会った素敵なマネジャーたちの物語をご紹介します。彼らのストーリーの中に、「働く」を「幸せ」に変えるための大切なヒントが詰まっていると思います。ぜひ、感じ取ってください。
*このコラムは実話をベースに作成しておりますが、社名や氏名、そして若干の設定を変更したストーリーとなっています。

第5回「後始末が部長の仕事か・・・」

井上が生産管理部長の辞令を受けとったのは3ヶ月前。しかし念願の生産管理部長への異動辞令を聴いたときの高揚感は、すっかり遠く昔の思い出のようだった。

法人向けの特殊機械を製造するA社において、お客様の発注から生産、品質検査、調達も含めすべての工程を管理し、また営業サイドの戦略立案にまで関わる生産管理部長のポストは花形中の花形ポストであった。「これが勝負どころ」と、普段冷静な井上も少々肩に力が入っていた。また、生産現場出身で、直近は営業企画部門で部長をしていた井上にとって、納期遅れと、品質クレームが頻出していることに相当な危機感も持っていた。

しかし、一週間も過ぎると井上はトラブルの濁流に飲み込まれ、現場からメールで送られてくトラブルの数々にいつも唖然とさせられていた。

「最終検査で不良が発見され出荷できない」
「あるはずの部品在庫がなく、組み立て工程が止まってしまった」

後始末に翻弄される井上はいつも、「なぜもう少し早く・・・」と悔しい気持ちで奥歯を噛みしめていた。
また更に井上を陰鬱とさせるのが、各部から寄せられる自己弁護の報告であった。井上は居ても立っても居られず、工場を鬼の形相で走り回っていることから、「暴走機関車」と現場では揶揄されていた。

そんな混乱状況の折、人事部から一本のメールが入った。来月から研修をスタートするという事だった。何でも12名の部長を、毎週火曜日の朝に集め、75分間のセッションを30回続けるという内容だった。

初めて見るタイプの研修だなあと思いつつ、自分の現状を見つめると、30週間後には生産管理の責任者から外されているかもな・・・と思わず物思いにふけってしまった。

井上は研修の狙いにちょっとした引っ掛かりを感じていた。

「マネジャーの成長に欠かせない力は、経験を振り返る力(内省力)であり、この研修では忙しいマネジャーが、その忙しい中で自分の経験やマネジメントを仲間とともに振り返り、経験を通じ成長していく力の獲得を目指します」

暴走機関車と化している井上にとっては、振り返るという行為は相当に遠いものと感じた。

「忙しい中でも自分を振り返る力か・・・」

「この忙しい時に・・・」と思わないでもなかったが、このままこのペースを続けていていても何も変わらない事だけは薄々感じつつあった井上は、藁にもすがる思いで研修に参加することを決めた。

その研修は、マネハプと言うマネジメントについて立場の同じマネジャー同士が経験を共有するというワークから毎回スタートした。ハプニングに事欠かない井上の話は毎回、他の参加者からの注目の的となっていた。何回かセッションを重ねてきた頃だった。井上はいつものようにマネハプでトラブルに巻き込まれた話を振り返っていた。

「いやー、本当に難しいですね。後始末ばかりで困ってしまいますよ・・・」

そう話を締めた井上に対して、ファシリテーターと言う研修講師が話を重ねてきた。

「井上さん。本当に毎日大変ですね。でも、「難しいね」っていうのは、振り返りを止めちゃうキーワードなんですよ。「難しいね」というと、その後考えなくて良くなるでしょ。だから、「難しいな」と感じたときは、逆に「こういう時は難しく考えすぎずに・・・」と口にするようにしてみてください」

優しい語り口だったせいか、思わず照れ笑いでその場をやり過ごしたものの、確かに「難しいね」と言っている瞬間、自分が問題から逃避していることに気が付いた。そんなことを内省しているとき、ファシリテーターが更に質問をしてきた。

「もう少し早く事実を知ることができれば問題を小さくすることができたんですか?」
とっさの質問に完全に不意を突かれた井上にファシリテーターが質問を重ねてきた。

「後始末ではなくて、前始末をする方法はありませんか?」
「何かもう少し早く情報をキャッチする方法は無いんですか?」

昇格後、ひたすら後始末に追われてきた井上にとって、情報を手前でキャッチして、後始末ならぬ、前で始末するという事すら考えてこなかったことに気付いた。

「そんなことができるのだろうか?」

井上はその日から、その事ばかりを考えていた。

そんな時、あるメールが目に飛び込んできた。
井上には通常他部門の部長、もしくは課長から情報が共有されるが、時折、他部門の顔も分からないメンバーからのCCメールが入ることがあった。激流に日々飲み込まれている井上にとって、正直、CCメールは蚊帳の外の存在だったが、その瞬間、「ひょっとしたら」という予感があった。

悠長にメールを読み込む時間がもったいないと思った井上は、送信元の担当者に内線を入れた。

「メールありがとう。」
「急にCCを入れてもらっているけど、何か僕に協力できることがある?」

無意識に「ありがとう」と言っている自分に気が付き照れくさくなったものの、現場を仲間に付けなければという無意識の意識がそこにはあった。顔も分からないその担当者は戸惑っている様子だったが、現状を訴えるように伝えてきた。

状況を把握した井上は、即座に対策会議を開き、部門間調整を行いトラブルを未然に防ぐことに成功した。

「やれやれ・・・・。前始末か・・・。」
井上はその言葉を噛みしめるように、自分自身を振り返っていた。

半年後。井上の朝の電話攻撃は工場内で有名になっていた。
あの出来事以降、井上は出社時間を朝7時としていた。そして今まで見ていなかったCCメールをチェックし、8時から担当者に次々と電話をしていた。

「何があったの? 何が一番心配? 困っていることは?」
「僕へのリクエストはある?」
「君の意見を教えてくれるかな?」

問題があっても決して語気を荒げることなく、協力的な井上の態度は、今までクレームで張りつめていた工場内の空気すら変えていた。

また暴走列車と言われていた井上は、今では工場内をゆったりと歩き、いろんな職場で雑談している姿が見られるようになっていた。


ある日の研修で井上はファシリテーターからこんな問い掛けを受けた。
「井上さん。それにしても最近いつも笑顔ですね」

少し、はぐらかすように井上は答えた。
「以前は後始末が自分の仕事と思って一生懸命仕事をしていましたが・・・、でも、ちょっと違っていたようです。少しだけ前で始末する方法が分かってきました。」


END


片岡裕司 連載コラム 「『働く』を『幸せ』に変えるマネジメント」④ 2015年6月29日

このコラムでは、わたしが出会った素敵なマネジャーたちの物語をご紹介します。彼らのストーリーの中に、「働く」を「幸せ」に変えるための大切なヒントが詰まっていると思います。ぜひ、感じ取ってください。
*このコラムは実話をベースに作成しておりますが、社名や氏名、そして若干の設定を変更したストーリーとなっています。

第4回「やりがいはどこから来るのか?」

新任課長の山本は初めての部下との目標設定を終え、猛烈な疲れを感じていた。部下との目標面談は大変だとは尊敬する部長、加藤から聞いていたものの、こんなに大変だとは思っていなかった。

5名の部下を抱える山本だが、想定外に彼を疲れさせたのは期待の8年目、島田だった。評価も高く、同期で一番に課長昇格もできそうな島田に、来期から始まる中期計画の取りまとめ役を任せるという事が山本の考えだった。
これをやり切れば、部長にも、人事にも自信を持って昇格の打診ができる。山本はそう考えていた。

目標面談では、管理職への登用をしてやると熱っぽく山本は語ったが、肝心の島田の反応は、「やりがいを感じない」という意外な反応であった。

思わず山本は、
「やりがいとか、モチベーションとか言っているじゃない。」
「お金をもらっている以上プロなんだから・・・。」
「やりたいとか、やりたくないじゃなくて、どうやるかを考えなさい」
と感情的に押し切ってしまった。

イラッとすると言葉が止まらなくなるのが山本も自覚する欠点でもあった。


そんなタイミングで人事部から、新任課長を集めてのワークショップというものを開催するという連絡がきた。

新任課長同士が集まり、初めての目標設定をどう乗り切ったか。お互いの取り組みを共有し、お互いから学ぶ相互支援の場という趣旨がメールに書かれていた。支援の場なんて聞こえの良いことが書いてあるものの、人事部門による新任課長チェックの場に間違いないと山本は踏んでいた。

「まあ、問題はなかろう。少々手こずったものの、島田にも難しい課題を課したし・・・」

当日はワークショップというだけあって、テキストもなく、参加者は車座に座らされた。
講師の代わりと思われる、ファシリテーターという司会進行役がついた。
お互いの経験から学ぶという趣旨のようで、それが最も効果のあるマネジャーの学習法ということだった。

ファシリテーターから出された最初のお題は、マネジメント経験の中で「感情の高ぶった経験」を思い出すというものだった。山本は迷う余地もなく、島田との目標設定場面を思い浮かべた。

山本の順番は3番目にまわってきた。
山本は事の経緯を披露し、仲間たちからも色々な意見がでた。
「最近の若者は・・・」
「ちょっと強引だったんじゃない・・・」

ひとしきり議論が収まってきたころに、ファシリテーターという進行役が「全員に質問ですけど」との前置きで優しく問い掛けてきた。
「最近はマネジャーになりたくないって人も多いようですね。では島田さんをもっと動機付けるにはどうすれば良かったでしょうか?」

そこで山本のいつもの悪い癖が出た。
「俺、そういうのは嘘だと思うんです。誰だって評価されて、給料が上がればうれしいんですよ。そうやって課長になりたくないとか言っている奴は自分の本音にフタをして、傷つかないように逃げているだけです。まともに付き合う必要なんてないんです。」

言い終わって山本はしまったと思った。これは人事によるチェックの場だった。こういう課長をパワハラ課長と呼ぶのかもと・・・。

ファシリテーターは山本の噛みつきにも慣れた感じで、笑顔で更に問い掛けてきた。
「じゃあ、山本さんの部下、島田さんは山本さんに本音を言ってないってことですね。」

「・・・。」

「じゃあ、なんで本音を話していないんでしょうね。」
「彼の本音を知るためにできそうなことは何かありますか?」

山本は先程の暴言への恥じらいもあり、「少し考えます」と一旦黙ることにした。
黙っているうちに山本は少し冷静に自分を俯瞰できているような不思議な感覚を覚えた。
面談風景を覚えながら、一方的に話す自分の姿がそこにはあった。

「本音の前に、あいつの声すら思い出せないな。。。どんな声だっけ?」

山本の表情が緩みだしたのを見計らってファシリテーターが再び山本に問い掛けてきた。
「山本さんが一番本音が話せたなぁって思える上司はどんな人でしたか?」

山本は尊敬する加藤部長のことを思い出していた。加藤はいつも部下のことを第一に考えてくれている・・・という風に感じられたなぁ・・・。なぜなのか・・・。


職場に戻り、山本は島田と面談の機会を持った。腹を決め、まずは彼の入社からの8年間について教えもらった。初めて知ることが沢山あった。そもそも3年前に作った今の中期計画も取りまとめは島田だったということ。島田は前任の課長に机上の空論を作るのは上手いが、実践力がないという指摘を克服したいと考えていたとのことだった。今のプロジェクトに集中したいというのが彼の本心だったようだった。

「でも、自分の昇格のことを考えてくれて本当にありがとうございます。ただ、実力もないのに昇格しても意味が無いですし。自分は成果以上に新しいことができるようになる時にやりがいを感じるんです。」と清々しく語る島田に、山本は耳が赤くなる感覚を覚えた。

「やりがいか・・・ 俺の"やりがい"ってなんだったっけ。。。」と山本はつぶやいた。


END

片岡裕司 連載コラム 「『働く』を『幸せ』に変えるマネジメント」③ 2014年6月19日

このコラムでは、わたしが出会った素敵なマネジャーたちの物語をご紹介します。彼らのストーリーの中に、「働く」を「幸せ」に変えるための大切なヒントが詰まっていると思います。ぜひ、感じ取ってください。
*このコラムは実話をベースにしたフィクションとなっております。

第3回「コミュニケーションは永遠の課題」

新任部長の平山は、昇格から半年が経ち、少し物足りなさを感じていた。
課長時代は、部下からの相談に答え、お客さんのもとへ日参し、自分がこの会社の利益を稼いでいるという手応えがあった。

結果も残し、部長に昇格し、意気揚々としていた。
仲間達から、得意先から「おめでとう」と言われる毎日に、何とも言えない充実感を感じていた。

しかし半年が経ってお祝いムードが終わると、事態は一変した。
幹部会議では毎月叱責を受け、
課長の作った資料で業績状況は説明するものの、具体的に突っ込まれると正直答えようがない。「○○と課長から報告を受けています・・・」と。

ようやく手に入れた自分の城に戻ると、課長たちから得意先とのトラブルについての意思決定を次々と求められた。
総勢60名。6つの課で構成しているので、正直ストレスは課長時代の6倍だ。

「今期の着地見込みはだいじょうぶだよな」と課長に問い掛けると、「全力で頑張ります」とだけ返ってきた。詳細な資料を作って報告させたいという衝動に駆られるものの、課長時代から資料作りに時間を費やされることに憤りを感じていた自分としては、その言葉だけはグッと飲み込んでいた。


部長就任から半年後、人事が主催で新任部長研修というのが開催された。
部長就任から半年間の振り返りや取り組みの共有から研修は始まった。

最初は、抽象的に自分の身に降りかかったことを共有する。
何とも言えない照れくささがあったが、皆が同じような事で悩んでいることに正直ホッとした。
会議で叱責され、課長の報告遅れに振り回されている、と・・・。

しかし、ファシリテーターという司会役が
「もっと具体的な行動について話してください。」と促してきてから状況は変わった。
100人の部員全員と面談した。
自分が大切にする価値観を紙にまとめ、それを少人数で共有する会を何回も開いた。
課長たちとの合宿も行った。

皆が色々と工夫して行動を起こしている話を聞き、私は恥ずかしさを覚えた。
研修資料にあったが、私のような部長を土管型というらしい。本部長に「売り上げは大丈夫か?」と問われれば、そのまま課長に「大丈夫か?」と繰り返すだけでは土管という汚名を受け入れざるを得ない。

「上級管理職はビジョンを語れ」と人事部長から発破をかけられたが、正直何も湧き上がってこない。「売上目標を達成し、何とか今年も乗り切ったと喜び合おう」では誰もついてこないだろう。

何となく問題が分かってきた。
結局、コミュニケーション不足か・・・。永遠の課題だな・・・、と。
研修の最後で、「お恥ずかしながら」と断りながら、「部下との日常会話をまず増やし、よく知るところから始めたいと思います」と宣言した。

ファシリテーターから、
「1日考えて日常会話が一番大事と考えたのですね」と質問が入った。
こりゃ失敗だったかなと思ったものの、
「恥ずかしながらそこから始めさせてください」と素直に答えた。

「では、本気で日常会話をしてくださいね。本気ですよ。必死に、真剣に。」
「毎日、毎日、本気で日常会話をしてくださいね!」と奇妙なエールを送られた。


「本気で日常会話をするって、何をするんだろうか・・・」


悩んでいてもしょうがない。行動力が自分の強みだったと思い出した平山は、
翌日の朝から自分に試練を課した。
試練と言っても大それたことではない。
毎日朝の30分を部下との日常会話に使うというだけだ。

外出の多い営業メンバーに対し、朝から矢継ぎ早に電話をした。
「おはよう!」、「元気か?」、「困っていることはないか?」、「そう言えばあの件は?」と。

3ヶ月が経過した。
朝の電話攻撃にオフィスのブラブラ歩き、とすっかり私の行動は部内で有名になっていた。
そして、平山は大きな手応えと充実感を感じていた。一人5分も話さなかったため名前と顔を覚えることもままならなかった60人と毎週のように話せるようになってきた。そして次第に、部内で何が起きているか、次にどこでトラブルが起きそうか、が見えるようになってきた。
しかしもっとも嬉しかったのは、気のせいかもしれないが、メンバーがイキイキと笑顔で働きだしているように思えたことだ。

3ヶ月前には何も思いつかなかった部のビジョンや将来像についても、もっと皆と話したいと思えるようになってきた。伝えたいことも、聞きたいことも沢山ある。短期間で自分がこんな気持ちになるとは思いもしなかった。
何とも言えない充実感だ。就任当時とは全く違う。

「コミュニケーションは永遠の課題」・・・でもなかったか。。。

END

片岡裕司 連載コラム 「『働く』を『幸せ』に変えるマネジメント」② 2013年11月5日

このコラムでは、わたしが出会った素敵なマネジャーたちの物語をご紹介します。彼らのストーリーの中に、「働く」を「幸せ」に変えるための大切なヒントが詰まっていると思います。ぜひ、感じ取ってください。
*このコラムは実話をベースに作成しておりますが、社名や氏名、そして若干の設定を変更したストーリーとなっています。

第2回「魔法のノート」

新任マネジャーの高木は頭を抱えていた。

4月に念願のマネジャー昇格を果たし、1年目の今年は何としても良い成果を残したいと思っていた。自分を引き上げてくれた部長、そして自分の昇格が正しかったと人事にも見せ付けたい。そう思っていた。同期よりもマネジャーへの昇格が遅れた高木には強い思いがあった。

しかし現実は甘くなかった。高木は自分と共に成果をあげていく仲間の部下達が、自分の足を引っ張っているように感じていた。何度も何度も同じミスを繰り返し、何度も何度も叱り続ける。「いい加減にしろ」と正直思っていた。

ちょうど半年たった10月に人事部主催で新任マネジャーのフォローアップ研修が用意されていた。研修は新任マネジャー同士がグループになりお互いの現状の悩みを共有し、お互いに解決策を考えるというスタイルらしい。

研修と言うより、新任マネジャー同士の作戦会議と言う感じだ。

研修と言えば一方通行の重たいものという認識があったが、同じ立場で悩んでいる仲間達と話し合いながらというスタイルは新鮮だった。思わず愚痴大会になりそうになると、講師ではなくファシリテーターという外部のリード役がさりげなく介入してき対話を促進していた。

最初は自分の悩みを披歴することに抵抗感があったが、その場の雰囲気とファシリテーターに促され素直に自分の悩みを話してみた。

「なんど指導をしても言う事を聞かない部下がいるんです。」
「何度注意しても治らないのでやる気がないんだと思うんですが・・・。」
「最近はついつい怒鳴ってしまうというか・・・。」


「皆さんの中に同じことで悩んだことのある方はいませんか?解決策の糸口とか?」

ファシリテーターに促され、一人の参加者が手を挙げた。彼も自分と同じく遅れてマネジャーに昇格した山田だった。山田の話は興味深かった。

「同じことで悩んではいませんが、同じことで課長を悩ませたことがあります。新入社員の頃、いつも課長に怒られていて正直自信を失っていました。途中からは何で起こられているのか?なぜ怒られているのかもわからなくなり、いつも課長の怒りを鎮めるための返事をしていました。最大の目的はこの場をやり過ごすこと。で、たぶん指導してくれている内容がほとんど耳に入っていなかったんです。そのことに気が付かされたのが1冊のノートを書くようになってからなんです・・・。」

「ノート?」

「毎回、課長から注意を受けた内容をノートまとめるように言われたんです。」

「なんだノートをつけるだけか・・・。先輩から注意されたことをノートにメモするなんて言うのは当然のことだ。そう当然のこと・・・。」


ファシリテーターが一言介入してきた。
「具体的にはどんなノートを書いていたんですか」


山田は自分の経験を色々と披露した。どうやら今の部署でもそれをやっているらしい。当然のこと。自分が先輩にやってもらって良かったこと。それらを地道に実践している山田が何か遠い存在に見えてしまった。「自分は問題児だったので、問題児の気持ちが良く分かるんです」とも言っていた。気持ちねぇ・・・。


アドバイスは具体的だったが、それだけだった。ただ当然のことではあるが、それ以外にこの状況を打開する方法が見当たらなかった。

まずは1人一冊ノートを作った。部下に注意する際はそのノートを渡し、自分の言ったことをそこにまとめさせる。1頁1項目。簡単だと思ったが意外と苦戦した。私の言ったことを部下が上手く書けないということだった。部下に書かせると何が分かっていて、何が分かっていないかが手に取るように分かるようになってきた。

同じミスを部下がしたら、以前書いたノートの頁を開けさせ、そこに2度目と言うチェックをさせた。このノートを取り入れてから部下の反応と言うか、何かが違う感じがしていた。今度は直りそう。そんな雰囲気がした。

またノートを付けはじめて驚いたことがあった。正直出来損ないと思っていた部下のノートが6頁以上進まないのだ。どうしようもないと正直感じていたが、6つぐらいの課題なら何とか直してあげたいと感じ始めていた。


部下達の雰囲気も随分変わってきた。部下達に思い切って最近の状況を聞いてみた。

「お陰さまで楽しく働けています。以前の課長はいつもイライラして正直何を言っているか・・・。今はよく話を聞いてくれるし、丁寧に説明してくれるので。本当に有難うございます。」

「イライラして何を言っているか分からなかった」という言葉には正直イラっとしたが、ノートに問題をまとめさせようと思うと落ち着いていくことは間違いなかった。


3ヵ月後。状況は一変した。部下が思うように動いてくれるようになってきたのだ。ミスも殆どなくなり、上手くいけば前半戦の遅れを挽回できるペースになってきた。しかし、そんな事は今の自分にはそれほど重要ではなかった。結果以上に部下がイキイキしていること。そして自分がイライラせず、課長として部下の変化を楽しめていること。そして毎日楽しいこと。それが何よりの成果だった。

「魔法のノート」のお陰で本当にすべてが変わりました。

END

片岡裕司 連載コラム 「『働く』を『幸せ』に変えるマネジメント」① 2013年9月5日

このコラムでは、わたしが出会った素敵なマネジャーたちの物語をご紹介します。彼らのストーリーの中に、「働く」を「幸せ」に変えるための大切なヒントが詰まっていると思います。ぜひ、感じ取ってください。
*このコラムは実話をベースに作成しておりますが、社名や氏名、そして若干の設定を変更したストーリーとなっています。


第1回「結果がでれば、組織は元気になるのか」

営業部長の野中は意気揚々と支社長との面談に望もうとしていた。

2年連続予算未達成に終った西東京支社おいて、起死回生を狙い若手の野中が大抜擢されたのが1年前。まだ30代だ。野中は期待に応え、上半期で予算を10%超えて達成すると、下半期の予算を上方修正し、見事西東京支社を窮地から救った。

「1年間本当に苦しかった。2年分のマイナスを取り戻したんだ。支社長からどんな賛辞を受けるのか。どんな褒め言葉を頂いても褒められすぎと言うことは無いだろう。」

野中はそんな事を思いながら支社長室の扉をノックした。扉を開けると野中は驚いた。支社長だけでなく、そこには人事部長が待ち構えていたからだ。「今日、時間をとってもらったのは・・・」と想定に反した重たい口調で面談が始まった。

人事部長から報告されたのは部門単位で行なわれる職場診断の結果だった。前代未聞の結果だったらしく本社でも問題になったようだ。自由記入欄には、「もう逃げ出したい」、「部内での足の引っ張り合いに耐えられない」、「グループ間の嫌がらせを何とかして欲しい」、「リーダークラスに嘘の報告を強要され耐えられない」。人事部長が何を話したかまったく記憶に無いが、そんな言葉が報告用紙に並んでいた。人事部長が事前にメンバーと面談もしていたらしく、大泣きした人もいたということだった。

「結果がでれば、組織は元気になる。」

そう信じて厳しく接してきたのは確かだ。結果がでないのにモチベーションが上がるなんて戯言だと野中は信じてきた。一人ひとりが少々追い込まれている、疲れていることを感じていなかったわけではない。リーダーは特に厳しく接してきたので少々嘘をついているのも許容していたつもりだ。ただ結果が出ればすべてが解決すると・・・。

後日、人事部からの紹介でコンサルタントと面談をする事になった。どんなおっさんが来るかと思ったら大して年代は変わらない風貌だった。この会社の、この部署で自分よりも結果が出せる人間はいない。そして結果でなければ意味が無い。色々指導されるんだろうがその事だけは伝えようと思い面談に望んだ。

面談ではコンサルタントが口火を切った。何か難しい理論でも押し付けられるのかと思っていが第一声は、

「野中さんは、尊敬する部長とかいらっしゃるんですか?」

とかなり素朴な質問をされた。
野中の脳裏には新人時代お世話になった木岡部長のことが思い浮かんだ。

「そりゃ、厳しかったですよ。毎日説教されて。」
「その時、どんな気持ちでしたか・・・」
「うーん。当時は色々ありましたけど、でも楽しかったですよ」

「厳しかったのに?」

「一体感があったというか。怒鳴られても、すぐに大笑いできるような・・・。」
「愛情と言うか、何というか・・・」

「愛情って具体的になんですか?」

「うーん。怒られるんですけど、こっちもスッキリするんです。」
「明日、何すればよいのかが分かるので」
「怒られるけど、前向きになれるってことでしょうか」

「野中さんの部下はどう?」「野中さんは何をすればいいと思う?」
「それとも何をやめるべきなの?」

「・・・・・・」

面談は約3時間。野中の中に残る木岡との経験を解きほぐすことに時間が使われた。

1年後-
再び野中は支社長と人事部長を前にしていた。滅多に笑顔を見せない人事部長が笑顔で話しだした。昨日、部下と面談し、昨年大泣きしたメンバーがまた大泣きしたと言うのだ。一瞬耳を疑ったが、面談中「ありがとうございます」と何度も言いながらうれし泣きをしたという話だった。部長があの日から別人のようになった。本当に仕事も、職場も楽しいといって感謝されたという内容だった。

野中は、「あの日」からガラッと自分を変えた。恥ずかしがってもしょうがない。自分の信じる事をやらないと。そんな気持ちだった。一番変えたのは営業会議だ。個別の営業課題はグループリーダーに任せ、自分が主催する会議は進捗会議から勉強会に変えた。訪問数を増やすには?提案件数を増やすには?成約率を増やすには?3つのテーマで実施し、好きなテーマに部下は参加していい。単なるお勉強ではなく、その場で実際にスケジュールを作ったり、提案書を作り上げたり、プレゼンのロープレをする動きのある勉強会だ。困った事を解決する会といった雰囲気で、時にはビール、おつまみ付きで大騒ぎで実施した。

メンバーが前向きになること、方向を見失わないこと、だけを考え話し続けた。個と個が協力すること。グループ間で支援すること。お互い切磋琢磨して成長すること。この3つを毎日のように1年間言い続けた。

野中は面談が終ると相談にのってくれたあのコンサルタントにメールをした。

去年までは数字と仕事しか見ていませんでした。
今は毎日、笑顔に囲まれて、こんなに仕事が楽しくなるとは思いませんでした。 野中

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