このコラムでは、わたしが出会った素敵なマネジャーたちの物語をご紹介します。彼らのストーリーの中に、「働く」を「幸せ」に変えるための大切なヒントが詰まっていると思います。ぜひ、感じ取ってください。
*このコラムは実話をベースにしたフィクションとなっております。
第3回「コミュニケーションは永遠の課題」
新任部長の平山は、昇格から半年が経ち、少し物足りなさを感じていた。
課長時代は、部下からの相談に答え、お客さんのもとへ日参し、自分がこの会社の利益を稼いでいるという手応えがあった。
結果も残し、部長に昇格し、意気揚々としていた。
仲間達から、得意先から「おめでとう」と言われる毎日に、何とも言えない充実感を感じていた。
しかし半年が経ってお祝いムードが終わると、事態は一変した。
幹部会議では毎月叱責を受け、
課長の作った資料で業績状況は説明するものの、具体的に突っ込まれると正直答えようがない。「○○と課長から報告を受けています・・・」と。
ようやく手に入れた自分の城に戻ると、課長たちから得意先とのトラブルについての意思決定を次々と求められた。
総勢60名。6つの課で構成しているので、正直ストレスは課長時代の6倍だ。
「今期の着地見込みはだいじょうぶだよな」と課長に問い掛けると、「全力で頑張ります」とだけ返ってきた。詳細な資料を作って報告させたいという衝動に駆られるものの、課長時代から資料作りに時間を費やされることに憤りを感じていた自分としては、その言葉だけはグッと飲み込んでいた。
部長就任から半年後、人事が主催で新任部長研修というのが開催された。
部長就任から半年間の振り返りや取り組みの共有から研修は始まった。
最初は、抽象的に自分の身に降りかかったことを共有する。
何とも言えない照れくささがあったが、皆が同じような事で悩んでいることに正直ホッとした。
会議で叱責され、課長の報告遅れに振り回されている、と・・・。
しかし、ファシリテーターという司会役が
「もっと具体的な行動について話してください。」と促してきてから状況は変わった。
100人の部員全員と面談した。
自分が大切にする価値観を紙にまとめ、それを少人数で共有する会を何回も開いた。
課長たちとの合宿も行った。
皆が色々と工夫して行動を起こしている話を聞き、私は恥ずかしさを覚えた。
研修資料にあったが、私のような部長を土管型というらしい。本部長に「売り上げは大丈夫か?」と問われれば、そのまま課長に「大丈夫か?」と繰り返すだけでは土管という汚名を受け入れざるを得ない。
「上級管理職はビジョンを語れ」と人事部長から発破をかけられたが、正直何も湧き上がってこない。「売上目標を達成し、何とか今年も乗り切ったと喜び合おう」では誰もついてこないだろう。
何となく問題が分かってきた。
結局、コミュニケーション不足か・・・。永遠の課題だな・・・、と。
研修の最後で、「お恥ずかしながら」と断りながら、「部下との日常会話をまず増やし、よく知るところから始めたいと思います」と宣言した。
ファシリテーターから、
「1日考えて日常会話が一番大事と考えたのですね」と質問が入った。
こりゃ失敗だったかなと思ったものの、
「恥ずかしながらそこから始めさせてください」と素直に答えた。
「では、本気で日常会話をしてくださいね。本気ですよ。必死に、真剣に。」
「毎日、毎日、本気で日常会話をしてくださいね!」と奇妙なエールを送られた。
「本気で日常会話をするって、何をするんだろうか・・・」
悩んでいてもしょうがない。行動力が自分の強みだったと思い出した平山は、
翌日の朝から自分に試練を課した。
試練と言っても大それたことではない。
毎日朝の30分を部下との日常会話に使うというだけだ。
外出の多い営業メンバーに対し、朝から矢継ぎ早に電話をした。
「おはよう!」、「元気か?」、「困っていることはないか?」、「そう言えばあの件は?」と。
3ヶ月が経過した。
朝の電話攻撃にオフィスのブラブラ歩き、とすっかり私の行動は部内で有名になっていた。
そして、平山は大きな手応えと充実感を感じていた。一人5分も話さなかったため名前と顔を覚えることもままならなかった60人と毎週のように話せるようになってきた。そして次第に、部内で何が起きているか、次にどこでトラブルが起きそうか、が見えるようになってきた。
しかしもっとも嬉しかったのは、気のせいかもしれないが、メンバーがイキイキと笑顔で働きだしているように思えたことだ。
3ヶ月前には何も思いつかなかった部のビジョンや将来像についても、もっと皆と話したいと思えるようになってきた。伝えたいことも、聞きたいことも沢山ある。短期間で自分がこんな気持ちになるとは思いもしなかった。
何とも言えない充実感だ。就任当時とは全く違う。
「コミュニケーションは永遠の課題」・・・でもなかったか。。。
END
ジェイフィールの岡本直子です。
6月に入り、全国的に梅雨の季節となりました。この時期は体調を崩しがちですよね。雨の季節、長めにお風呂に浸かってみたり、食事の時間を少しだけゆっくりすごしてみたり、ちょっとした工夫で心身ともに元気に乗り切って行きましょう!
さて、「イキイキ・キラめく働く女性たち」第二回目の今日は、私が出逢った素敵な女性マネージャーの中のお一人をご紹介したいと思います。
私の前職(広告会社)でのクライアントで、外資系金融企業のマーケティングマネージャーをされていたHさんです。CSRのイベント企画をご提案し実施に至りました。イベントは2回、1回目はHマネージャーをはじめ、マーケティング部門の方々数名が立ち合いにいらして下さり、盛況にて終了しました。
日にちをあけて2回目の実施、その時の立ち合いはHマネージャーお一人でした。私たちは少し疑問に感じ(Hさんの部下の立ち合いだけでも問題ない状況でした)、何か社内事情があるのだろうとは思っていました。
すると数日後、突然、その企業の日本撤退が知らされたのです。慌ただしい状況下、私たちがHマネージャーと面会できたのはしばらくたってからでした。
Hさんは2回目のイベント実施前から撤退を知っており、彼女だけが立ち合うようにしたとのこと。
「部下の子たちには、もちろん、必要な残務処理はしてもらっているけど、早く転職活動しなさいって言っているのよ。私は何とでもするけど、まずは彼女たちに落ち着いてもらわないと。私が彼女たちに代われることは出来るだけするようにしているの」
と、にこやかにお話しされたのです。
Hさんご自身もかなり厳しく、そして忙しい状況に追い込まれているにも関わらず、まずは部下のことを想い、自らイベント現場の立ち合いをし、日々遅くまで残務処理をされている。
そのときのHさんのお話しのされかたがとても清々しく、私は彼女のマネージャーとしての部下への温かい想いに、じん!としてしたことを今でもよく覚えています。
しばらく後。
マーケティング部チーム全員の転職が決まり、Hさんご自身も新たな働き場所が決まったとのことで改めてご挨拶する機会をいただきました。
そしてその時は私自身が、マネージャーというポジションについたばかりのタイミング。私は彼女に、当時様々な問題が顕在化していた組織をまとめていく自信がないこと、どうしたらいいかまったく見えていないという不安、正直マネージャーを引き受けたくない・・・とぽつぽつと話していたのです。
そんな私に彼女は一言。
「まずはやってみればいいんじゃない?すべてがあなた自身の素晴らしい経験になるはずだから。会社にとってだけではなくて、あなたにとってもね」
と、にっこり微笑みながら。
あ、そうか、やってみればいいんだ、と、すっとその瞬間、私は腑に落ちたのです。
彼女が今までしてきた行い、考え、お話しすること全て彼女の経験から生まれたのだ、と改めて気付きました。
思えばHさんも転職されてきたのですが、当初は部内でも衝突があったようで、私たちもどうお付き合いしていけばいいのか、考えた時期もありました。時間を経て素晴らしいチームへと変化していったように思います。Hさんも試行錯誤しながら、自然体でマネジメントに関わってきたのだなと。
難しく考えず、まずは自分なりにやってみようと前向きな気持ちへと背中を押してもらったのです。
ここ最近、特に女性たちから、管理職になりたくない、という話を残念ながらよく耳にします。
まずは身近にいる女性マネージャーをじっくり、ちらちらと「観察」してみてはどうでしょう?社内にいなければ取引先やお得意先、友人・知人のつながりの中にもいるかもしれません。
そしてざっくばらんに話しかけてみてはどうでしょうか?
第4回
「東洋思想と組織開発」④
前回は、仏教最古経典、「スッタニパータ」をとりあげ、脱皮をテーマに、自分に向き合うことの大切さについて論じました。
今回は、同じ「スッタニパータ」から、仏陀の幸福論をとりあげ、組織開発の在り方を探究してみたいと思います。
「スッタニパータ」の第二章の中に「こよなき幸せ」という節があります。
そこには、十の文章が並んでいます。
いくつか列記してみます。
「適当な場所に住み、あらかじめ功徳を積んでいて、みずからは正しい請願を起こしていること」
志や理念の大切さを説いているように思えます。
「深い学識があり、技術を身につけ、身をつつしむことをよく学び、ことばがみごとであること」
ここでいう「ことばのみごとさ」とは相手を恐れないで、自由に言葉が口を出ることです。
練磨継続の重要性を示しているように思えます。
「父母につかえること、妻子を愛し護ること、仕事に秩序あり混乱せぬこと」
人生の主人公になることを示唆しているように思えます。
ここで皆さんへお尋ねしてみたいことがあります。
組織開発を「組織の人々を幸せにする営み」と定義するのは突飛でしょうか。
現に、幸せを追及することを表明し、本気で実践している企業があります。
例えば、寒天のトップメーカー、伊那食品の塚越会長は、経営にとって 本来あるべき姿とは「社員が幸せになるような会社をつくり、それを通じて社会に貢献する」ことだと言います。急激な成長ではなく、木に学ぶ「年輪経営」でも有名な同社は、創業以来48期増収増益という驚異的な数字を達成しています。
また、ブラジルのコングロマリット企業セムコは、
Fortune(フォーチュン)500 ではなくて、Fortunate(幸せな)500企業を目指せと標榜しています。
こうした企業は幸せを追及することで、自らの生命力を増しているように見えます。
仏教を基点とすると、組織開発とは組織で働く人々の幸せを追及にする営みであると言えそうです。
さて皆さんは、ともに働く人々の幸せのために何をしたいですか?