「裸の王様だ」と言える人でありたい。
このコラムでは、私自身が体験したり、直接見聞きしたりする中で感じたこと、学んだことをお伝えしていきます。初回の今日は、私が尊敬するマネジメントの大家、ヘンリー・ミンツバーグ教授から学んだことをご紹介します。
第1回 ミンツバーグ教授から学んだこと(1)素直に現実を見ること
2012年、彼が来日したときにじっくりとインタビューをさせてもらいました。その時、理想とするリーダー(人)は誰ですか?という問いに、
「アンデルセンの童話にある『王様は裸だ』と言った子どもが、私にとっての唯一のヒーローだ」
と答えてくれました。
さらに彼は続けて、「彼が勇気を出して言ったからという理由ではありません。彼は、他の人が見ようとしない現実を、ありのままを見たからです」と説明してくれました。
そうです。たしかにミンツバーグ教授は、何か難しいことを勇気を出してやろう、ということを言ったことはありません。ごく自然な営みこそが大切だと言い続けています。私たちが、いつしか大切なものを見失っていることを常に問いかけてくれる存在です。
彼は、経営学の異端児とかあまのじゃくと言われることがありますが、彼からすると、他の人たちが歪んでしまっているということだと思います。
「日本企業に戦略はない」と切り捨てるマイケル・ポーター教授に対して、「戦略のない日本企業に負けたアメリカ企業に戦略があると言えるのか」とかみついたり、「人は大切な経営資源(Human Resources)だ」と言ったドラッカーに対して、「私は経営資源ではなく人間だ(Human Being)だ」と異論を唱えたりしています。常に彼は、見たままをそのまま受け止めて、誰に対しても臆することなく自分の信じることを述べています。
私たちも、自分では真実を、ありのままを見ているつもりなのに、いつしか歪んでものを見ていることはないでしょうか。既存ビジネスや既得権を守ろうとする気持ちが無意識のうちに働いたり、これを言うと会社や上長の方針に逆らうことになるな、と自己検閲が入ったりすることはないでしょうか。
さらに、私自身の経験で最も危険なのは、一見正しく見えることの中に大きな問題が潜んでいるときです。「お客様のために」、「お客様の要望に応えるために」というフレーズは、誰もが逆らえないパワーを持っています。
「お客様のため」や「悲願の○○達成にむけて」という力強いフレーズに遭遇したとき、何かを見落としてないか、素直な子どもの目で見ることを試してみてください。こんなところに裸の王様を礼賛する落とし穴があるのかもしれません。
発言をする前に、まずはありのままを見ることを問うところから始めてみませんか。
今回ご紹介したミンツバーグ教授と直接ディスカッションできる機会があります。9月にモントリオールで開催される、リフレクション・ラウンドテーブル(世界展開名はCoachingOurselves)のカンファレンスです。今年は、パートナーや導入企業に限らず、広くオープンにしています。どなたでも参加できますので、ご関心の方は下記URLをご参照ください。ご不明な点はジェイフィールまでお問い合わせください。
URL:http://reflections.coachingourselves.com/
このコラムの感想、疑問、要望などありましたら、ぜひお聞かせください。お応えしたいと思います。