ジェイフィール2019.12.17
昨日、弊社取締役の片岡裕司が事例紹介セミナーを開催いたしました。
『人生100年時代の組織作りを考える
~「働き方改革」から「働き続けたい組織改革」へ~
事例紹介 「働きやすく生産性の高い企業・職場」への改革 ~西部ガス株式会社の取り組み ~』
というタイトルで、ベテラン社員の活性化というテーマもありながら、組織づくりについてのお話をさせていただきました。
ゲストスピーカーは福岡に本社を構える西部ガス株式会社(以下西部ガス)の常務執行役員 髙山健司様です。
タイトルにもあるように、西部ガスは平成30年、厚生労働省が主催する「第2回 働きやすく生産性の高い企業・職場表彰」の大企業部門・優秀賞を受賞されました。
また同年、公益財団法人日本生産性本部が主催する「第10回 ワークライフバランス大賞」でも大賞を受賞されています。
もちろん、ベテラン社員の活性化についても、うまく進んでいる会社です。
まずは片岡から「ベテラン社員はマイノリティではなく、マジョリティになる」ということを改めてお伝えしました。
労働人口は減少し、高齢化率は高まるというのが現実。
「年上の部下がやりにくくて」というマネジャーがいるとしたら、それは大多数の部下のことをやりにくいと言っていることになるので、もう管理職ではないということです。
しかし本来、年齢に比例してパフォーマンスは高くなるもの。
専門性もリーダーシップも上がっていくという調査結果が出ています。
ぜはなぜ、現実はベテラン社員がお荷物のように見られてしまうのでしょうか。
イントロワークではこんなことを考えてもらいました。
「皆さんは65歳。定年延長で75歳まで働ける時代です。上司は20歳年下。
でも、皆さんは仕事そのものが楽しくてしょうがありません。そんな状態には何が欠かせませんか?」
これについては、参加者の皆さんから以下のような回答がありました。
・いい仲間
・相互理解
・まだまだ学べるというワクワク感
・周りからの期待
などなど...
つまり本人の意識だけでなく、周りとの関係性、組織風土やマネジメントが大事だと皆さん思っているわけです。
これは組織づくりの基本だと片岡は言います。
特別なことをするのではなく、基本をきちんとやっていくことでベテラン社員も、その他の社員も、みんながイキイキと働ける組織になるという、言わば当たり前のことなのです。
西部ガスも基本の「き」をコツコツとやってきて、今があります。
2011年からの取り組みである「しごとRe:フォーム推進活動」は業務の見直し(量を減らす)、不要コストの削減、働き方の意識改革(主に時間)といった内容から始まりました。
背景にはインフラの自由化があります。
これによって仕事量が増えることは目に見えていたので、まずはそこに向けての取り組みを始めたとのこと。
トップメッセージとして「必要ならばその業務をやめてもいい」と伝えたそうです。
「しごとRe:フォーム推進活動」の委員長である人事労政部長や委員であるマネジャーたちに判断を委ねました。
トップダウンとボトムアップがうまくいき、この取り組みは進んでいきます。
時間外労働についてはイントラネットで管理し、月間の見込みを入力し、また結果も入力して公開をしていきました。
これによってうまくいっているところ、いっていないところが見える化されますが、何かペナルティがあるわけではなく、うまくいっているところから学ぶことで全体がよくなっていきました。
面白いのが理解浸透のためにやった社員川柳。
「例がない だからやるのさ 見直しを」
「帰り際 五分ですむに だまされて」
など、うまい!と言いたくなる川柳が並んでいました。
その他、全館自動消灯や会議終了時刻の事前設定、年間スケジュールの見直しなど、本当に基本的なことをきちんとやっていったということです。
結果として意識改革が進み、活動開始から5年で時間外労働を26%削減することができました。
2017年からは改善から改革へと進んでいきます。
「働きやすい環境づくり」「管理の高度化」「業務効率化・合理化」といった改革を進め、価値づくりのフェーズに入っていきました。
ICTを活用し、テレワークを導入したところ、会議の時間が減って顧客接点が増えたとか。
また副次的効果として、ベテラン社員が若手にITツールの使い方を教えてもらうことでコミュニケーションが生まれたということもあったようです。
多様性の追求・変化への適応を目指し、2030年には「個の尊重」「協業・協働する組織」という姿を描いています。
さらに2017年から始めたのが「ダイバーシティの推進」です。
ダイバーシティ推進に必要なことは何かと社内アンケートを取ったところ、半数近くが「意識改革」と答えたとか。
そこでキーパーソンはマネジャーということで「マネジャーイクボス化計画」が始まります。
マネジャー121名全員がイクボス宣言をし、自分の宣言を紙に書いて写真撮影。
ポスターとして職場(目につくところ)に貼るということをやりました。
イクボス度チェックもあり、本人の達成度や実行度と、メンバーから見たイクボス度をアンケートで数値化。
イクボスアワード対象を決定するという取り組みも。
一般社員においては2019年から「みんなのハッスルミーティング」を実施し、ダイバーシティ推進を自分ごとするためにミーティング参加者全員が楽しく気兼ねなく想いを発する(ハッスル)ことができる語り合いの場を設けました。
ハッスル宣言では「相手をジャッジしない」「否定せず聞くからスタート」「自分の意見を明確に持つ」「まずは若手から発信」などの言葉が出ました。
ミドル社員の活躍推進への取り組みはダイバーシティ推進のひとつとして始まりました。
西部ガスでは50代の社員をベテランではなく「ミドル社員」と呼んでいます。
研修で「ミドル社員」と何度も呼びかけることになるわけで、ベテランやシニアと何度も呼ばれるより、ミドルと呼ばれることで意識改革の一助になっているようです。
以前は50代の社員に向けて定年後のライフプラン研修ばかりやっていたとのこと。
それを変え、53歳の社員向けにキャリアデザインセミナーを行うことにしました。
この研修をジェイフィールが一緒にやらせて頂いています。
研修では自分の強み・弱みをキャリアを振り返りながら再確認し、自分の活躍を阻害しているものは何かと改めて考えてもらいます。
一方、参加者のマネジャーにも研修の趣旨と内容を説明し、職場でのサポートを呼びかけます。
西部ガスでは将来的に、事業の半分をガス以外のものにしようと考えています。
50%が新規事業になるわけですから、知見がないのはみんな同じ。
経験豊富なミドル社員なら、活躍できる機会がたくさんあります。
実際に研修をやってみると「自分の活躍を阻害しているのは自分かもしれない」という気付きを得た社員もいるそうです。
質疑応答では「マネジャーの意識改革はそんなにうまく進むもの?」「役職定年や給与ダウンがあってもモチベーションはあがる?」などの質問が出ました。
髙山さんは「会社の本気度をどう見せるかはよく考えました。経営課題として発表し、イクボスへの取り組みは会社として宣言するなどで本気度を伝えていきました。モチベーションについては、"役に立っている"と本人が思えることが大事です。そのためには職場もミドル社員の立ち位置をわかっていることが必要です。」と答えてくださいました。
最後に片岡からは「今私たちは歴史的な転換点に立っています。人事パーソンとして、そこを超えるチャレンジが託されている。管理職を目指すことが正しいという価値観では、多くの社員が敗者になる。敗者ばかりを生み出す組織では、社会的存在意義がないのです。ここで変われるかどうかが、幸せになれるかどうかに関わってきます。すべての社員が長いキャリアをイキイキと活躍できるよう、組織の全体像としてのデザインが重要です。」とお伝えし、締めくくりました。
セミナー終了後、髙山さんの周りには多くの人が集まり、お話していました。
皆さんが本気で取り組みたいと思っていることが伝わり、未来に希望を感じました。