佐藤 将2018.01.10
16.もう一つの、この世界(II)
≪前回より続く≫
先日、イスラエルとのオープンイノベーション・セミナーに参加する機会を得た
(参考記事※)。
イスラエルからやってきた連続起業家(Serial Entrepreneur)のお一人が、
「イノベーションで一番大事なものは」と問いかける。
「技術」
「情報」
→「ノー」。
「インスピレーション!」
「パッション!」
→「ノン」。
(・・・)
「どれも大事だよ」
「けれど一番大事なのは・・・」
「出会った瞬間からお互いにリスペクトし合い」
「"I am a functional specialist"というサイロから出て」
「自分に対してモデスト(謙虚)」
「対話を通して誰も持ってない新たな発想を生み出す・・・」
「"We are a Team!"というカルチャー(組織風土)だ!」。
***************************
あの日、ロンドンブリッジ近くのオフィスでチームになったのは、極めてエキゾチックなミレニアル達だった。
右隣はイランから来たという。真正面は、パキスタン出身で英国育ち。左横はフランス人だがロシア育ち。英国人は1人しかない。他テーブルを見渡しても、似たような状況だ・・・
(余談:いずれ東京もそうなるのかな)。
最初、焦った。
「イランって、どんな文化だ?」
「パキスタンって、どこだ?」
「フランス人だけど、ロシア出身って??」
「そもそも英国に来て間もないし・・・」
(ステレオタイプでの異文化対応ができない!!)。
迷っている間もなく、アサイメントが与えられる。
「我が社のコアバリューに従った場合、この状況でどう判断し行動するか?」
限られた時間内に、チームで対話し、発表せよという。
その瞬間、スイッチが入った。
***************************
最近、日本で次世代リーダーシップ研修をしていて気づいた。
対話には、少なくとも3つのタイプがあることを。
1) 経験の共有を通して自身の感情や固定観念に気づく「内省的」対話
2) 限定した時間で誰もが持ってない新しい知を生みだす「創造的」対話
3) 相手の靴を履き感情を移入同化する中で一体化する「共感的」対話
恐らく、上述の「ザ・チーム」には、三つの対話のすべてが必要だろう。
私見ではあるが、日本のミレニアル世代(20代)は、「内省的」、
海外のミレニアル世代は、「創造的」。
ただ、どちらも、羨ましいぐらいに、「共感的」(Empathetic)だけど。
***************************
森の中で感じる、すべてがつながっている感覚。
そこで感じるのは、アイデンティティではない。
前世紀的な"近代的自我"というラベルを貼ることでもなければ、
狭い"自分らしさ"という檻の中に押し込めることでもない。
あの日、
多国籍チームの中で、
スイッチが入った際に感じたのは、
「肌の感覚が消えていく」感じだった。
自分を規定するシールド(盾)がなくなっていく・・・
自分を守るべきバリアー(防御壁)が消えていく・・・
同じ目的に向かって、
お互いの過去も未来も関係なく、
その場に溶けていく。
けれど、個々人の顔や表情が消えることはなく、
お互いのポテンシャルが交錯して共感が生まれ、新しい何かが生まれていく。
***************************
ロンドンブリッジ近くのオフィスからは、テムズ川が一望できた。
テムズ川の流れを見ながら、何度か思った。
人生は、川の流れに沿って生きるのがいいのか。
逆らって生きるのがいいのか・・・
ある朝、テムズ川の上流、「あのタワーブリッジ」の先に、美しい朝陽が昇るのに気づいた。
その時、ふいに後ろから声がした。
「どちらだっていいのだ」と。
「いずれにしても、重力があるのだから」と -
***************************
そう遠くない未来、多くの新世代(ニュー・ジェネレーションズ)が、国家や民族、宗教を越え、チームでつながれたら・・・ひとり一人が、アイデンティティ(近代的自我)に目覚めながらも、それを越え、「エンパシー」や「コンパッション」でつながれたら・・・
グラス片手に乾杯しよう
「もう一つの、この世界」に。
≪シリーズ二部完結≫