重光 直之2025.03.03
マネジメントシェアリングと聞けば、何となく想像できるように思いますが、現実的にイメージできるでしょうか。マネジメントをシェアする人は、あなたなのか?、あなたの上司なのか?、それともあなたの会社の社長でしょうか?
マネジメントシェアリングを現実のものとするために、その実際を4つの切り口から見ていきたいと思います。
今回は、「誰が」シェアするの? です。
先ほど社長を例に出しましたが、可能だと思いますか。「そんなの無理」と思われたとしたら、少し思い込みが強いのかもしれません。実際、世界の大手企業ではいくつもその事例を見ることができます。NETFLIX社はTed Sarandos氏 とGreg Peters氏が共同CEOとしてマネジメントしています。
以前、共同CEO体制をとっていた企業には、セールスフォース、オラクル、SAP、サムソンといった有名企業が挙げられます。アメリカ、欧州、アジアと地域に偏りもありません。その時々の社内外の状況に応じて、柔軟に経営体制を選択しているようです。一人よりも賢い選択ができる、時として暴走しがちなトップを抑制することができる、という利点があるからでしょう。
遠い海の向こうの話だけでなく、日本でも創業時のホンダでは本田宗一郎氏と藤沢武夫氏が、ソニーでは井深大氏と盛田昭夫氏が、互いの長所を活かしつつ素晴らしい製品を次々と世に出していきました。役職としての社長は一人でしたが、二人三脚という言葉がピッタリで、実質的に共同CEO体制だったと言えるでしょう。
「誰か」はトップだけでなく、ミドルでも可能です。イギリスでは、司法省の長官やロイド銀行の役員といった上級幹部職でジョブシェアをしているという情報もあります(2020年時点)。欧州では、マネジメントだけでなく、広く仕事をシェアすること(ジョブシェアリング)が一般的で、フルタイムでないパートタイム(短時間勤務や週休3日以上)のマネジャーが一つのマネジメント職をシェアしながら担当しているケースが珍しくありません。
日本でも導入事例を見ることができます。日揮は部長職の業務を3つに、リクルートでは課長相当職を2つに分割してマネジメントを行っています。
つまり、「誰か」とは、特定の階層や部署、役職だけでなく、マネジャー全般に適用可能な仕組みであることがわかります。次回以降は続編として、「何をシェアするの?」、「誰とシェアするの?」、「何がシェアして得られるの?」といった切り口で探っていきたいと思います。
「日本の人事部」プロフェッショナルコラム掲載