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佐藤将 連載コラム「ニッポンが世界を元気にする」⑧

佐藤 将2014.09.17

8.君島、MANGAいいかもよ (破)

≪前回より続く≫

「あれが、デネブ、アルタイル、ベガ」
それは中学2年生の時だった。

なぜか陸上部の夏合宿に参加した。
最終日の前夜、突如、誰かが、
「湖まで行こう」と言い出す。

(おい、本気かよ・・)
(先生に見つかったらどうすんだよ・・)
(何分歩くんだよ・・)
(それに、外は真っ暗だよ、怖くねえか・・)
(・・・)

「よしっ、行こうぜ!」。

2年生だけ5〜6名で、合宿所を抜け出す。
長野の高原の真っ暗な畔道を歩く。
「お〜怖え〜、オレ、帰るよ〜」、慎重な田中君が叫ぶ。
「おー帰れよー」・・・田中君、帰れるはずもなく。

どのくらい歩いたのだろう、
「おー着いたぞー!」
駆け足で、水辺まで走る。

そして、仰向けに転んだ瞬間、
(ウヮァー)
空から星が降ってきた。

「あっ、夏の大三角形が見えるぞ!」、誰かが叫ぶ。
(えっ、どれ、どれ?)
「あれだよ、あれ、あれ、あれ!」
(あれが、デネブ、アルタイル、ベガ・・・)。

その後、いろいろな場所で、いろいろな星空を見たけれど、
あの時のセンセーションは、忘れられない。

*************************

先日、ある若手中堅向けのリーダーシップ研修でのこと。
受講者全員が、自分らしい(自分固有の、最近グローバルで言われるところのオーセンティックな)リーダーシップを発揮した経験を振り返る。その後、「もし、今、それを発揮できないていないとすれば・・・それは、なぜ?」という議論をする。

そこで見えてきたのは、
「失敗が怖い」、
「周りに同調されなかったら恥ずかしい」、
「経験が(失敗経験が)、邪魔をする」、
という、ためらい、でも、

「自分に期待されているかがわからない」、
「自分は、そういうポジション(立ち位置)ではない」、
という、まよい、でもなく、

「言い出しっぺが損をする」、
「リスクを取ってやった人たちが損をしている」、
「評価されない、報われない」、
という、一見かしこい、合理的な判断、でもない。

では、いったい何が、彼ら彼女たちのリーダーシップを束縛しているのだろう?

*************************

最近ふと気づいた、「この世界」の意味合いが世代によって違うことに。

ある世代以上になれば、「この世界」といえば海外やグローバルといった地球規模的な『空間』を指していた。「世界で戦う」、「世界で勝つ」、「世界で勝ち続ける」、「世界で生き残る」、エトセトラ。

それが、新世代(ニュー・ジェネレーションズ)になると、空間が自分の半径内に狭まる代わりに、時間軸が一気に広がる。過去の延長線上にはない『不連続な未来』へと。「この世界は、不確実で不透明」、「割り切れない、この世界だけど」、「迷い苦しんでも、自分たちで選び取った、この世界だから」、「僕たちは、この世界で生きていく」・・・

そこにあるのは、未来に対する不安や恐れ。そして、「そんな時代に生まれてしまった」というアンフォーチュネートな(不運な)運命へのあきらめ感。それは、日本の若者だけでなく、欧州をはじめとした21世紀の多くの先進国の若者に共通する感覚なのかもしれない (Loads loads loads of things are going in life)。

けれど、ニュー・ジェネレーションズに特徴的なことは、その諦念を裏返し、不思議な明るさで戻ってくることだ。「未来は不連続だけど、この世界で生きていこう。(迷い苦しんでいるのは)ひとりじゃない、力を合わせて」と。

そこにあるのは、世代間での対立でもなければ、社会階層間の闘争でもない。格差への剥き出しの怒りでもなければ、運命への嘆きでもない。ただ、静かな哀しみと覚悟。

そこに、日本の新世代が持つ、「この世界」のリーダーとしてのクールさがある。
21世紀のグローバルリーダーとしての突出した可能性と未来がある。

*************************

もし、一部の若手や中堅のリーダーシップを束縛しているモノがあるとすれば、それは、「本来の自分とつながれていない感覚」なのかもしれない。

その部分をないがしろにして、ただ企業側が求める物差しを、リーダー要件や役割基準として押しつけても、真のリーダーシップは覚醒しない。・・「役割ばかりにとらわれて、本当は何をしたいの?」。

90年代(ナインティーズ)に流行った、目標管理や評価に基づく誘因(外発的動機づけ)を、仕組みとして押しつけても、もはや時代遅れ。・・「目標ばかりにとらわれて、大事な気持ち、置き去りにしていない?」。

忙しいけど、心のチューニング。

*************************

あの夏の夜、突如、湖上にあらわれた星空。

もしかしたら、「星空というものは、目指すものでなく、一緒に見上げるものだ」と悟った時、人は、他者(お互い)に対しても、地球に対しても、やさしくなれるのかもしれない。

だとしたら、21世紀のルネッサンスは、地球の重力に魂を縛られたまま起きる、のかな。

君島、やっぱ、MANGA、悪くないかもよ -
≪次号に続く≫

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