高橋 克徳2022.04.05
組織にも感情がある。皆さんもそう思うことはないでしょうか。
足を踏み入れた瞬間、イキイキとした空気感やあたたかい雰囲気に溢れた職場もあれば、
イライラした感情や冷めた感情が蔓延している職場もあります。
わたしはこの組織全体に空気感や雰囲気として広がっている感情を「組織感情」と名付け、2007年から多くの職場で組織感情診断を行ってきました。
組織感情は大きく、快・不快という感情のタイプと活性・鎮静という感情のレベルの二軸で分類できます。
活性状態にある快感情が「イキイキ感情」、鎮静状態にある快感情が「あたたか感情」、活性状態にある不快感情が「ギスギス感情」、鎮静状態にある不快感情が「冷え冷え感情」と定義しました。
診断を通じて見えて来たのは、良い組織ではほぼ全ての社員が「あたたか感情」を実感しており、更に良い感情を引き出し合う連鎖が生まれているということでした。
組織の根幹に、お互いのことをよく見ているよ、何かあったら助けてくれるよという「安心感」がある。
その安心感が心の余裕を生み、周囲を見渡す気持ちを生んでいく。
自然と配慮ある行動、助け合う行動が生まれ、感謝の言葉やお互いを認め合う言葉が飛び交うようになり、「支え合い感」や「認め合い感」が広がる職場になっていきます。
こうして「あたたか感情」という土台が生まれると、仕事への前向きな感情も引き出されていく。
良い仕事、それぞれの頑張りが見えるようになり、周囲のために自発的な行動をとる人たちも出てくる。
更にみんなにで困難を乗り越えていく意識、何かを目指していく意識が共有できるようになると、「主体感」や「連帯感」が組織全体に広がっていきます。
良い職場には、こうした良い感情、正の感情の連鎖が起きています。
ところがお互いの感情を出せない、押し殺して働ければならない職場では、負の感情の連鎖が起きてしまいます。
自分だけが大変な思いをしている、気付いてくれない、助けてくれないという負の感情が、職場全体の空気をつくり、互いの関係を益々希薄なものにし、閉じこもる人ばかりをつくっていく。
行き過ぎると、感情が動かない無感情職場になっていきます。
コロナで働き方や距離感が変わり、無感情職場がさらに増えてきています。
人がつながる組織をつくるためにはまず、今の組織にどのような感情の連鎖が起きているのかを客観的に捉えることが重要です。
組織にも感情がある。組織も生き物だと思って、向き合ってみてください。
※ 本コラムは、日本商工会議所会報2021年6月号への掲載文を加筆・修正したものです。
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