高橋 克徳2022.04.27
私たちはこれからどんな未来を経験するのでしょうか。
AIなどの技術の進化が仕事の仕方、人の役割を変え、脱炭素社会に向けてビジネスの転換を迫られる企業も増えていきます。
この中で働く人たちの価値観も働き方も多様化し、ライフを起点に人が組織を選ぶ時代になっていくと思います。
こんな未来に踏み出すために、リーダー、あるいはリーダーシップはどのような革新を求められるのでしょうか。
「変化の時代だからこそ強いリーダーが必要だ」。
「自らの強い意志で、思い切った決断ができるリーダーにならなければ、大きな転換はできない」。
確かにこうした経営のリーダーシップがこれまで以上に求められるときだとも思います。
一方で、未来を洞察することも、多様化する価値観と向き合うことも、一人で抱えるにはあまりに難題だと思っているリーダーも多いと思います。
まさに強いリーダーが方向を示して、自らが先頭に立ち、指示をしてメンバーをけん引するという、これまで教えられてきたリーダー像で良いのか。
こんな風に悩んでいる人も多いのではないでしょうか。
これまでリーダーシップ論の世界では、カリスマ型リーダーやサーバントリーダーシップなど、さまざまな理論が提示されてきました。
ただ、これらのリーダーシップ論は、リーダーからメンバーにどのように働き掛けるのか、外部への影響力の行使の仕方、スタイルを論じるものでした。
ところが、リーダーという役割を担うという前に、リーダー自身の人としての在り方が大事だという議論が出てきました。
オーセンティック・リーダーシップという理論です。
オーセンティックとは、「ありのまま、本物の」という意味です。
リーダーという役割のよろいを着るのではなく、自分の本来性とつながり、自然な振る舞いの中で自分らしく人と向き合える存在にあります。
自分だけでなく、共に働く仲間たちも同じように、偽りない自分を自然に出し、良さを認め合い、互いの力を引き出し合う関係になっていきます。
その中で、組織の思いと各人の思いを重ね、そこに正しいと思う世界を自らも実践し、ともにつくり上げていきます。
リーダーも同じ人間です。
迷っていることがあれば、周囲を頼ればよい。大切なのは、みんなでより良い方向に進もうとする思いと姿勢を貫けるか。そこに真の信頼をつくることができるかどうかということだというのです。
若い人たちに求めているリーダー像を聞くと、まさにこんなリーダー像と一致します。
ビジネスも働き方も会社の在り方も大きな転換を迎える時代です。誰も何が正解かだなんて分かりません。
だからこそ、それを一緒につくっていこうという姿勢と向き合い方が大切になるのではないでしょうか。
気付くと、みんながリーダーになっていく、みんなでリーダーシップをつないでいく。こんな組織が未来を切り開くのだと思います。
※ 本コラムは、日本商工会議所会報2022年2月号への掲載文を加筆・修正したものです。
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