高橋 克徳2022.04.27
つながる組織をつくるためには、経営者から社員までが立場を越えて、異なる思い、価値観を重ね合うプロセスが必要になります。
しかし実際に、そうした取り組みを行うのは難しいと感じる人も多くいらっしゃるのではないでしょうか。
「そもそも、社員が自分の意見を言えるのだろうか、きちんとした対話ができるのだろうか、一つの思いに重なっていくのだろうか・・・」。
確かに、上からの指示で動くことが当たり前だった組織では、心理的安全が低く、本音を出せない人も多くいます。
だからこそ、徐々につながりを再生し、対話ができる組織に変えていくステップが必要になります。
第1ステップは、土台となる人と人とのつながりの再生です。
経営者、管理職、社員が、感じていること、悩んでいること、こうしたいと思っていることを素直に持ち寄り、語り合えるようになることです。
そうした対話ができる土台づくりから始める必要があります。
自分のこと、互いのことをよく知る、言動の背景にある経験や思い、価値観を知る。その中で、互いの困っていることに寄り添ってみる、知恵を出し合ってみる。そうして互いのことを理解し、違いを受け入れ合うための対話を繰り返す中で、感じたこと、思ったことを素直に言い合えるようになる。
それが最初のステップです。
第2ステップは、人と仕事とのつながりの再生です。
やらされ感で仕事をしている人や、仕事は上司が与えるものだと思っている人は、仕事とのつながりがますます希薄になっていきます。
改めて、日々目の前の仕事をこなすだけのように思えていても、小さな喜びを感じた瞬間はないだろうか。その小さな仕事の喜びを持ち寄ったときに、改めてこの仕事をしている意味を見いだせないだろうか。同時にそうした仕事の意味や喜びを実感できる働き方に変えていくことはできないのだろうか。
そんな対話をしていく中で、仕事への思いを改めて見い出していくことが必要です。
ここまで来たら、第3ステップ、会社、組織とのつながりを取り戻すに移ります。
本当にこの会社にいる意味は何か、ここで働くことがみんなの幸せにどうつながっていくのか。
未来起点で発想したとき、未来の変化が私たちに期待していることは何か、社会課題起点で考えたとき、社会で起きている問題と向き合うことが自分たちの組織の使命にならないのか。幸せ起点で考えたとき、一人一人の人生が幸せになるために、この組織ができることは何なのか。
自分たちの組織の意味をさまざまな角度から考えてみます。
組織の目標を与えて、仕事と人を上から変えるのではなく、人と人とのつながりを変え、対話を重ね、仕事や組織の在り方を自ら変えていく。
この逆のステップが、つながる組織づくりには必要です。
※ 本コラムは、日本商工会議所会報2021年10月号への掲載文を加筆・修正したものです。