高橋 克徳2022.03.07
「仕事が面白い、職場が楽しい、会社が好きだ」
そんなことを子どもたちの前で堂々と語れる大人を増やそう。
わたしはこういった思いで、組織変革や人材育成のお手伝いを続けてきました。
仕事なんて面白いことばかりではないけど、自分たちが生み出したものが誰かの役に
立っていると思うと頑張れる。職場だって人間関係で悩むこともあるけど、良い仲間
に囲まれていて幸せだと思う。会社だって有名な会社とは言えないけど、ここで働い
ていることに感謝しているし、誇りに思っている。こういった感情に包まれた会社で
は、人は主体的になり、自発的な連携が生まれ、組織の力が発揮される。実際にそん
な変化を目の前で数多く見てきました。
ところが、コロナで物理的距離感が拡がったことが、心理的距離感も少しずつ変えて
いったのではないでしょうか。今まで会社にいて時間と空間を共有していれば、それ
だけでつながっていると感じていたものが、職場に行ってもみんなが一定の距離を保
って働くようになり、どこかで遠慮が生まれてしまう。気づくとみんなが黙って、目
の前の仕事だけをこなすようになる。中には在宅勤務になり、かえって仕事がはかどる
と喜んでいる人もいれば、ますます孤立して閉じこもる人も出てくる。気づけない、
自分から関われない人たちばかりになる。
こうした状況が続くと、今までの働き方に疑問を持ち始める人も出てくる。私たちは
本当に仕事や職場の仲間、会社とつながってきたのか。こんな時だからこそ、仕事の
ため、仲間のため、会社のために頑張ろうと、心から思えているだろうか。あらため
て、自分がここで働く意味って何だろうか、と。大切なのはこうした素直な不安や疑
問を出し合い、対話できる関係性があるかです。
組織力は、個人力の足し算で決まるのではなく、個人力とつながり力の掛け算で決ま
ります。個々人の力をつないでいくとき、情報的つながりだけでなく、感情的つなが
りが重要になります。なぜなら、感情的なつながりがなければ、心の中にある本当の
悩みや課題、その先にある期待や思いが出てこないからです。お互いの感情に寄り添
い、知恵を出し合い、思いを重ねたとき、組織の力が発揮されるようになります。
あらためて、「つながる」という言葉の意味を問い直してみませんか。わたしたちは
こうした環境の中で、これからどのようなつながりを組織の中につくっていけばよい
のでしょうか。そんなことをこの連載を通じて、一緒に探究していただけたらと思い
ます。
※ 本コラムは、日本商工会議所会報2021年4月号への掲載文を加筆・修正したものです。
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