佐藤 将2017.10.24
15.もう一つの、この世界(II)
≪前回より続く≫
かつて、外国を旅する目的は、新しい世界を知ることだった。
今、ミレニアルズ(若手世代)が「この世界」を旅する目的は、何なのだろう・・・
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かつて、ネパールの王様は、国民に映画を見せなかったと言う。
「そんな事をしたら、自我が目覚め、自己実現のスケールをアップしてしまうだろう」。
今、日本という国で、
NPO法人を立ち上げた教来石さおりさんは、
カンボジアをはじめとした途上国の村の子ども達に青空映画館を届けようと語りかける。
「映画が、子ども達の夢を見る力をはぐくむから」(※)。
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最近、次世代リーダーシップ研修で突出してくる一群がいる。
大学時代、NPOやサークルでボランティア活動をしていた方々だ。
自分と深く対話をするワークも、
未来ビジョンを語るワークも、
恐るべき感性と説得力で迫ってくる。
それだけではない・・・
他者に配慮して、スムーズに会話を盛り上げる。
共振共鳴で、周りの胸の鼓動を高めていく・・・
静かに、確実に。
最近、世界のミレニアル世代では<当たり前>になりつつあるスタイルだけど・・・
それにしても・・・
何かが違う!
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かつて、ニューヨークやLA、ロンドンで出会った海外の若者達も優秀だった。
そのセルフエンジンや向上心、
アウトプットのスピード感は、
「さすが」と思わせるものがあった。
それ以上に、
若くしての独立心や発信力は、
「フュー」と言わせる爽快さがあった。
今、次世代リーダー研修で、
ヨーロッパ圏やドバイ、シンガポールなどからやってくるミレニアル世代は、
それに輪をかけて、
多国籍チームでは当たり前の
フラットな対話連携型リーダーシップが身に付いてくる。
自然なエチケットとして。
でも何かが違う。
何かが違うんだ・・・
何だ?
クールだけどおとなしいと言われて来た日本のミレニアルズから、
『何か新しいリーダーシップ』が生まれている。
「もう一つの、この世界」が・・・
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21世紀、世界は、ますますグローバル化していくだろう。
それは、従来の、国家や宗教、民族をベースにした"私たち"のアイデンティティを脅かす。
その反動で引き起こされる摩擦、ハレーションが、今、極めて悲惨な形で起きている。
それに対して、
「自分たちに、できることがある」、
「自分にも、やれることがある」、
と言って、手を差し伸べる若者がいる。
その行く先は、
遠いアフリカの飢餓から、
日本の難民受け入れ問題まで様々だけど・・・
「同じ可能性にあふれた若者たちの未来が、生まれた境遇によって阻まれているなんて・・・地球の未来にとってもったいない!」(激化する民族紛争や宗教対立で祖国を追われた方々を支援するWELgeeを立ち上げた渡部清花さん)(※)
彼ら彼女たちの「旅」の源泉にあるのは、単なるパッション(Passion)ではなくコンパッション(Com-passion)。
21世紀、市場原理主義が<当たり前>となったこの世界で、「神の見えざる手」で救えない社会課題に対して、自然に、しなやかに、「人の手」をさしのべる。
--「もう一つの、この世界」--
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この世界のグローバル化は、同時に、
近代産業社会(インダストリー)を前提としたユニット単位の、
"我が社"というアイデンティティを変質させていく。
産業革命以降、
長く近代人が依拠してきた
「組織によってインスティテューショナライズされることで、アイデンティティを保つ」
という<当たり前>の価値観(外壁)が、崩れていく。
それに気づいた日本のミレニアルズが、
自分たちで新しい動きを始めた。
かつて、海外経験は、
イコール、留学、海外トレーニー、海外出張、海外駐在などであった。
けれど、
今、企業に入る前に、
職業を選択する前に、
ギャップイヤーや夏休みを活かして、
世界各地のベンチャー企業でインターンとして働く。
それも、
インドやアフリカ、南アジアといった新興国を中心に。
電子マネー&スマホなど、いきなり21世紀インフラが出現する地で。
近代産業社会の<当たり前>(ドグマ)をスキップしてくる世界で。
未来の社会課題が山積みの、もう一つの世界で。
この世界の「新しい若者たち」(ミレニアルズ)と共に働く。
「少子高齢化しても、"自分たち"が、虎になればいい。"世界中の人たち"とつながればいい」(タイガーモブ代表菊池さん、今年度第16回女性起業家大賞特別賞受賞)(※)
--「もう一つの、この世界」--
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先日、「映画配達人ツアー」(※)でカンボジアを訪れた後、来年海外インターンをするという高校1年生、小林なつみさんに出会った。
「カンボジアに行って、わたし達、先進国の人が幸せで、彼らが不幸というのは違うと思った」。
「高校生になって、ますます将来のことで悩むことが多かったけど・・・」
「自分たちの世代は、職業を見つける前に、自分が本当にしたいことを見つけることが大切だと思いました」。
ミレニアルズの「旅」の目的は、もはや産業社会(セカイ)の中での居場所(ジブン)探しではなく、21世紀、無限の選択肢がある中での、自分やこの世界の可能性(ポテンシャル)探しなのかもしれない。
―「もう一つの、この世界」ー
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先日、若手リーダーシップ研修の一環で、森の中で自己探求を行った時の事。
ナビゲーション役である一般社団法人「森と未来」のメンバーの方から、お題が与えられる。
「この森の中で、あーこれが自分自身だ、と思うものを探してきてください」。
受講者に混じって探す。
あれか、これか・・・
やっと見つけて、グループに戻る。
「なるほど」、「明確」。
お互いの選んだものに納得。
最後、自分が選んだものも説明。
自分でも、納得・・・
っと、その瞬間、
それまで森の中で感じていた感覚と違うことに気づいた。
「あっ」、突如、ある出来事がよみがえる。
ロンドンブリッジの袂でのこと。
「あーそうだったのか・・・」 (次回に続く)