高橋 克徳2022.04.18
人と人、人と仕事や会社との距離感が変わる中で、社員の中に小さな違和感、疑問が芽生え始めています。
私は何のために働いてきたのか、なぜこの会社で働くのか、会社の同僚とはどんな関係でありたいのか。
こうした状況を把握するためにも、まずは「組織全体に広がっている感情(組織感情)を知る」ということから始めてほしい。
これが前回お伝えしたことです。
その上で、改めてどんな関係をつくりたいのか、どんなつながりをつくりたいのか、あらためて問い直してみることが必要です。
今回は、会社と社員との関係について、一緒に問い直していただけたらと思います。
会社と社員との関係を昔のようにもっと一体感のある、家族のような関係にしたいと思う人もいるでしょう。
一方、仕事なのだから少しドライなぐらいがちょうどいいと思う人もいるでしょう。
そこに明確な一つの答えがあるわけではありません。ただ、ここで考えたいのは、そうしたメッセージを、真の意図も含めて正確に伝えてきたのかということと、その上で実態と一致できていたのかということです。
皆さんの将来を応援しますといって早期退職制度を導入しても、体のいいリストラにしか見えない。
頑張った人をより高く評価したいと人事制度を改定しても、評価が下がる人が何人も出ると、人件費を削減したかったんだとしか思われない。
社員を大事にしたいと言っても、ハラスメントを止められない職場では、社員のことを会社は本気で考えていないと感じさせてしまう。
そうせざるを得ない、実際にはなかなかうまくいかない。そんな事情もあると思います。
ただ一番良くないのは、「言っていることとやっていることが違う」と思われてしまうことです。
そう見えると、社員は「本当の目的は違うんでしょ、要は会社の利益しか考えていないでしょ」と捉えるようになる。心が離れていく。
でも、口に出して批判はしない、我慢する、割り切る。社員もやるべきこと以上のことはしなくなる。自発性を失う。
社員が自発的に動きだす会社は、素直に社員が会社の姿勢を正しく理解しています。
会社が裏表なく、誠実に向き合ってくれていると感じています。
だから自分たちも会社に対して誠実であろうとします。そこには感謝や敬意も生まれます。
そんな土台としての関係性がしっかりあるからこそ、周囲のための自発性が生まれるものです。
社員も会社も、苦しいときほど、実際に起きていること、困っていることを隠すことなく語れる。
それを自分事として捉え、相手を支えようとする。
こうした関係性が、社員と会社との間に築けるのか、そんな関係性が土台にある会社かどうかが、これからさらに問われてくるのではないでしょうか。
※ 本コラムは、日本商工会議所会報2021年7月号への掲載文を加筆・修正したものです。
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