ジェイフィール2023.07.19
ジェイフィールが提供するプログラムの一つに、「コネクティングリーダープログラム」があります。
「コネクティングリーダー」とは、どういったリーダーの事なのか?今回は、プログラム設計者である佐藤将さんにお話を伺いました。
「コネクティングリーダー」とは?
- 本日はよろしくお願いします。まず「コネクティングリーダー」とは、どういったリーダーなのでしょうか?
佐藤さん
まず、基本にあるのは、「誰もがリーダーである」という考え方です。
従来は、「一部のリーダー」が、大多数のフォロワーを率いていくという構図だったと思います。また、多くの場合、そのリーダーは、役職や地位に基づく「権威」(オーソリティ)で他者を「牽引」していたと思います。
一方、これからの世界で求められてくるのは、「誰も」が、自分の内側にある思いで主体的に動いていく。しかも、立場や権限に関係なく、「自分らしさ」(オーセンティシティ)に基づき。そして、互いに共感しながら繋がって、連動して、組織や世界が変わっていく、未来が変わっていく。そういう新しいリーダー像を、“コネクティングリーダー”と呼んでいます。
- このコンセプトは、どのような背景で生まれたのですか?
当時、考えていたことが三つあります。
まずは、日本の「若手・次世代のリーダーシップを覚醒したい」という思いです。
僕が、ジェイフィールに入社する前に経験した事は、海外での企業買収に伴う、数多くの人事プロジェクトでした。その中で、リーマンショック前後から、日本的経営と言われていたマネジメントや日本から来る役員やマネジャーのリーダーシップが、もはや通用しなくなっていることを、目の当たりにしました。もちろん、すべてのケースではないですが、以前は、尊敬を受ける日本人リーダーも多かっただけに、その変化は衝撃的でした。
一方で、想定外の驚きだったのが、日本から来る20代への同僚たちに対する外国人の評価でした。「日本人のマネジャーは、いつもスリーピー(眠そう)だけど、若手はスマートだ!」、「日本の次世代は、なんて素晴らしい!」と。それは、同じ20代の英国人の同僚たちからも同じで、「日本の若手はクールだ!」、「洗練されている」と。もう10年も昔の話なので、現在(2023年)の30代中盤の方々ですが、そこに、当時の僕なりに、日本の光明を見たのです。「この世代の潜在力(ポテンシャル)を引き出せば、世界に羽ばたける」、「日本復活の鍵は、次世代にある」と。
もう一つは、「日本企業における新しいイノベーションのカタチ」です。
2013年に帰国後、日本企業本社のヒアリングをしていく中で、新規事業やイノベーションのニーズを強く感じました。しかし、それが、なかなかうまくいかない。社内公募でメンバーを集めても、トップダウンで進めようとしても、なぜか上手くいかない。感じたのは、「熱量」の問題でした。原体験や原動力が曖昧な中で、業務として、イノベーションや新事業を起こそうとしても、それは上手くいかない。であれば、何が一番、人の「熱量」を上げるのか。それが、「誰かのために」という強い「コンパッション」(共苦・共感力)だと気づいたのです。「Com-passion」は、passionの前に接頭語のcom-(強める、共に)が付いているだけなのです。
一人ひとりが自分の原体験から来る「コンパッション」の“対象”を見つける。誰もが、「原体験から誰のために」のストーリーを語り、動き出す。それが組織のパーパス、社会的な要請と繋がり、チームで連動した時、これからのイノベーションが起きる。そうした「新しいイノベーションのカタチを、日本の組織で、次世代と一緒に起こしたい」と思ったのです。
そして、三つ目が、「社会の変化」でした。
かつて米国の大学院では、「経営側が労働者をどのように円滑に管理、統治するか」というモデルを学んだのですが、もはや、そうしたインダストリー(産業社会)を中心とした社会が終わりつつある予感を感じていました。近い将来、新しい社会が来る。その時に、社会で必要なリーダーシップは何だろう。一部の強いリーダーに依存するのではない、もっと民主的(デモクラティック)な、みんなで主体性を発揮していくリーダーシップとは何かという問い(クエスト)でした。
こういった課題感を持って、「コネクティングリーダー」の構想が徐々にできてきました。
- 最初に名前を聞いたとき、とてもユニークだなと思いました。この三つの背景から、「コネクティング」というキーワードに行き着くまで、どのような経緯があったんでしょうか?
まずこのプログラムを作るにあたって、マネジメントやリーダーシップ論だけでなく、心理学、哲学、社会学、宗教、神話学など、様々な学問を研究しました。それらのエッセンスから最初に辿り着いたのが、「他者と繋がること」の大切さでした。この時点で「繋がる」というキーワードが生まれました。
ただそれと同時に、「他者と繋がる」には、まず「自分と繋がらなくてはいけない」ということもわかりました。自分と繋がるというのは、「自分の軸を持つ」とも言い換えられます。最初は強烈なものでなくて良いのですが、内面から湧き上がってくるような動機がリーダーシップを発揮するための最初の起点になります。
そして今度は、より広い視点で「外の世界と繋がる」ことが重要だとわかったのです。自分たちの住んでいる世界から出て、外からの視点で自分たちの世界を俯瞰してみるということです。その中で、新しい価値観が生まれ、自他や社会の「幸せ」の概念がアップデートされていく。その先に、「未来」が生まれる。
このように、「自分」と繋がる「内なる旅」と、「他者」や「世界」と繋がる「外への旅」がかけ合わさると、誰かの「幸せ」のために、「未来」に向けたリーダーシップが生まれると考えています。
当初、「コネクテッド・リーダー」というワードが構想にありました。ただ、未来に向けた行動が、また自分に戻ってきて、メビウスの輪のように循環し続けることを発見しました。ですので、繋がりが連鎖し“続ける”ことから、「コネクティング」という名前にしました。
プログラム前後の変容
- 「コネクティングリーダー」のプログラムを受けた受講生や組織にはどのような変化が見られますか?
「コネクティングリーダー」は、まずは、自分と繋がることを優先します。ですので、最初の分かりやすい変化としては、受講生の「熱量」がグッと上がるのがわかります。そして、他者と繋がる、チームと繋がるワークをしていくので、その「熱量」が、周囲に伝播、連鎖していきます。その中で、誰もが、「自分らしさ」を取り戻し、主体的、連動的に動き始めます。
その結果、チームの関係性が劇的に変わります。そして、組織の中に、「イノベーションを生み出す熱量」が宿り始めます。
- リーダーシップの原動力である「コンパッション」について、もう少し教えてください
これまでのリーダー論では「パッション(情熱)が大事である」と言われてきました。もちろん、それは、重要なことです。全く否定はしないです。しかし、このパッションには、好き、没頭するエネルギーと同時に、怒りや反発のエネルギーが入ってしまう可能性があります。「倍返し」といった言い方もありますし、多くの世界の独裁者は、この怒りや攻撃のエネルギーを原動力にしてしまう可能性があります。「あの敵を倒そう」、「あの競争相手に勝とう」、「仕返ししよう」です。パッションの語源は、痛み(Pain)なので、それを踏み台にすると強いエネルギーになるのは、昔から知れ渡っているのですが、今の時代、あまり健全ではないと考えています。
一方、「コンパッション」(Compassion)は、同じく、その痛み(Pain)をベースにしてるのですが、その痛みを知っているからこそ、同じ痛みを受けている人の力になりたいという形で、「他者への優しさ」に転化します。その優しさが、強い原動力になるのです。
今後の組織、社会の変化とコネクティングリーダー
- 今後の組織や社会の変化は、コネクティングリーダーにどのように影響すると考えていますか?
おそらく誰もが、AIや人型ロボットなどの技術革新によって、組織やマネジメントの方法が変わっていくと見ていると思います。だからこそ、AIやロボットが代替できない、人に求められている部分を考えることが重要だと考えています。それが、人間の内面世界にある「コンパッション」だと考えています。ですので、今後の組織や社会の変化で、コネクティングリーダーがさらに求められてくるかと。
また、もう少し広い視点で世界を見たときに、民主主義が世界の中心である状態が今後も続くかというと、そうではなく、強いリーダーが大多数を牽引する全体主義の国が増えてく可能性があります。そういう時代になっていくからこそ、誰もがリーダーで、共感を軸としたコネクティングリーダーのコンセプトが、社会の土台として必要なのではと考えています。少し話が大きくなってしまいましたが。
- 本日は、ありがとうございました。
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