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佐藤将 連載コラム「ニッポンが世界を元気にする」⑤

佐藤 将2013.11.19

5. 1/7000000000の奇跡

『ナイス・ツー・ミーツ・ユー!』
中学時代に「How do you do」と習ったはずの挨拶の言葉を、はじめて海外で使ったのは、大学時代の事であった。最初、握手をするタイミングが、今一つわからなかった。小学生時代から左手はダメで右手で握手というのは知っていたけれども(侍ジャイアンツを見て)、どの間合いで、どのスピードで、どのくらいの強さでかがわからない。
数年後、南カリフォルニアの英語学校に遊学した時、いつの間にかそれを気にしていない自分に気づいた。新しく(これまでの自分の世界にはいなかった)人達と会うのが楽しくて仕方なかったから。外国人の友達も出来たから。いや、もしかしたら、その瞬間に訪れるケミストリーのようなものを感じ取れるようになったからかもしれない。

『不思議だね・・・』
小学生の時、一番の親友はミャンマー(当時はビルマと呼んでいた)と日本人のハーフの同級生だった。港町神戸の隣町とは言え、比較的保守的(Conservative)で、外国人を見かけることも少ない。毎日、一緒に通学していると、他のクラスの生徒からよくからかわれた。最初はよく彼らとも喧嘩していたけど、気づいたら、いつの間にかみんな仲良くなっていた。
そんなある日、彼が一ヶ月近く断食をしているのを知った。給食で食べられないものがあるのは知っていたけど、断食というイスラムの慣習を始めて知った。筆者にとって、余程衝撃だったのだろう、それを聞いたときの時の通学路の風景を今でも鮮明に憶えている。「なんで?」、「わからない」、「ふーん」・・・「不思議だね?」。彼はそれに答えず、珍しく二人黙ったまま一緒に歩いた。

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2013年現在、世界の人口は、70億を越える(国連統計)。
東京オリンピックがある7年後には、77億(10%アップ)、
21世紀半ばの2050年には、92億(30%アップ)、
50年後の2062年前後には、100億を超えると推定されている。

イギリスで産業革命が起きた1800年前後は、10億、
20世紀がはじまった1900年前後は、20億だから、
有史以来、ここ200年の急激な伸びは凄い。

今でも、1分で137人、1日に20万人の新しい命が誕生しているという。

21世紀、それを知ったわたし達は何をするべきなのでしょうか?

戦争すること?
原発を貧しい国に売って金儲けすること?
それとも・・・

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今、世界で誰かに出会う確率は、たったの70億分の1。
そんな運命のいたずらを、偶然と考えるか必然と考えるかは、自分次第。
たった一瞬の握手や名刺交換だけど、その瞬間に感じる何かがある。

人間(或いは全ての生物)に備わった特殊な能力(スペック)で、上手く説明するロジック(理屈)はないけど。

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かつて日本人は、同じ仲間と、同じ釜の飯を何年も共にすることで、コミュニティを作っていった。昭和期のかつて、三種の神器と言われた雇用システムも、人間同士の関係性を築く上で、ある程度の「時間軸」を必要とした。
それは日本人だけではない。
原始以来、恐らく、ほとんどの民族が、そうした「時間軸」の上でスローリーに関係性を築いていった。人口の伸びも、空間的な広がり感も、それと歩調を合わせていた。
しかし、21世紀、前提は変わる。空間軸だけでなく時間軸も。

その時、大事になってくるのは、一瞬の出会いの中で、関係性を築いていく能力(スペック)。

昨今、グローバルの世界で、シンクロニシティやセレンディピティと言われるコンセプトと相関するのかもしれない。それは決して特殊なものでなく、誰もが当たり前に持っている能力。

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今後の世界人口の伸びを見ると、
まずインドが急速に伸びた後、アフリカ大陸の人口が爆発的に増えていく。

日本企業は、そのことを、どれだけ視野に入れて布石(ふせき)を打っているだろう?
その人達のことを考えて、どれだけ自分たちの技術やリソース、知識や知恵を活かそうとしているだろう?

昨年、ロンドンでタクシーに乗ったとき、アフリカから移民したという運転手さんと話す機会を持った。聞くと、彼の母国では、中国資本の企業がたくさんあり、中国系企業のマネジメントが大きな話題になるという。
とても興味深い話を聞いた後、「ジャパニーズ・マネジメントはどうですか?」と聞いてみた。若いその運転手さんは、一瞬、怪訝な顔をした後、「知らない」と素っ気なく答えた。

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グローバル化する世界の中で、恐らく人間が持つスペックは進化していくだろう。或いは、原始時代のレベルに回帰していくだろう。その進化の中で、人間同士の関係性が生み出すケミストリー(化学反応)が、21世紀のルネッサンスを更に進化させる。

だから、すべての"Nice to meet you"を大切に --
その瞬間の感動を大切に

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