高橋 克徳2022.04.27
人にも生き方があるように、会社にも生き方がある。そう思ったことはありませんか。
お客さまにも社員にも何より誠実であることを大切にしてきた会社。
技術にこだわり、丁寧なモノづくりを全員で追求してきた会社。みんなで知恵を出し、新しいことにチャレンジし続けてきた会社・・・。
自分たちが大切にすることが、社員全体で共有され、そこに思いとプライドを持って働く。
そんな生き方が貫かれている会社が、かつてはたくさんあったと思います。
ところが、バブル崩壊以降、日本企業は自分たちの生き方を見失ったように思います。
家族のように大事にしてきた社員との関係を断ち、仕事に埋没させる人だけをつくり、成果と報酬でつながる関係をつくろうとしました。
その結果、会社への信頼や愛情という強い結びつきが失われ、会社が発しているメッセージと現場の取り組みにも大きな乖離(かいり)が生まれてしまったのではないでしょうか。
気付くと、目の前の仕事をこなし給与をもらうことが、社会人としての生き方だと思う人も増えてしまったと感じます。
極端な表現になっているかもしれませんが、同じようなことを感じている人も少なからずいるのではないでしょうか。
そんな状況の中でコロナが広がり、今までの働き方、生き方に疑問を持ち始めた人たちが出てきました。
会社中心、言われたことをこなしていくという生き方を自分は本当に望んでいたのではないでしょうか。
もっと自分らしく生きたい、もっと自分らしく働ける場所を見つけたい。
そう思って、働き方を変えたり、副業を始めたり、転職したり、移住する人も出てきています。
人が主体性を取り戻し、自分らしい生き方、働き方、会社との関わり方を模索し始めています。
会社も同じように、会社のあり方、生き方を問い直し、社員との新たな関係を見いだす必要はないのでしょうか。
もしそんなことを感じていたら、次の2つの取り組みを考えてみてください。
1つは、自分たち自身が改めて何のためにどう生きていく会社になるのか、その思いと生き方を一貫性のある形で示し、みんなの思いになるように対話を重ねること。
もう1つは、多様な生き方をする人たちを応援する、あるいはそうした人たちの思いを重ねながら、新たな会社のあり方、生き方を社員とともにつくっていくこと。
大切なのは、会社の理念や思いを押し付けて、社員に変われというのではなく、経営トップから社員までが、一緒に自分たちらしい生き方を見い出し、追求し続けようという姿勢を持てるかです。
しかもみんなで共有できるものは、例えば「誠実さ」「思いやり」「楽しむ」など、そこに集まる人だれにとっても大事だと思える極めてシンプルなものかもしれません。
でもそんな言葉を見つけようとする対話を繰り返すことが、真のつながりをつくっていくのだと思います。
ぜひ、生き方でつながる組織づくりを、目指してみてください。
※ 本コラムは、日本商工会議所会報2022年3月号への掲載文を加筆・修正したものです。