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佐藤将 連載コラム「ニッポンが世界を元気にする」㉒

佐藤 将2020.03.06

22.この世界で見つけたもの

レオナルド・ダ・ヴィンチの生家を訪れた時のこと。

フィレンチェから列車とバスを乗り継いで約2時間、
トスカーナの丘の上、
ヴィンチ村と呼ばれる小さな村からさらに徒歩で1時間、
ちょっとした山の頂にあった。

遠くにはアルプスの山々がそびえている。
眼下には、ヴィンチ村、
その先に、かつてルネサンスの中心であった、フィレンチェ。
(随分、遠いのだな・・・)

家に入ると、真っ暗な部屋で生い立ちビデオが上映されている。
日本ではあまり知られていない彼の幼少期。
(なんて孤独な幼少期だったのだろう・・・)

暗闇から出て、庭を散策する
水の音に誘われて、崖の下に降りていくと、
小さな滝があった。
美しい滝壺を見ていると、ふと彼の生きていた時代に引き戻されるような感覚になる。
(こうして寂しい時間を過ごしたのだろうか・・・)

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若い頃、海外で仕事をしていて良かったことの一つに、「内面世界」を持った人々との出会いがあった。
最初は、「なぜ気後れする」のか、わからなかった。
それは、相手の地位や職業、知性や経済力とは、全く別の基準だったから・・・
けれど、いつからか、すぐわかるようになった。
なぜかわからないけど、出会った瞬間に感じる何かがあった。
その内、それが、相手の瞳にあるのだと、わかった。
深い深〜い湖のような奥行きを持つ瞳だから。
(何が、そんな瞳をつくるのだろう・・・)

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振り返れば、自分は、「内面世界」を持つ歩みをしてこなかった。

小さい頃から、いつも親や兄弟、祖父母に囲まれ、一人の時間を持つことが少なかった。学校に通うようになると、毎日、友達と一緒。それに当時の日本は、一人でいること自体が、「根暗」と言われ、孤独こそが、最も悪いものとされていた。

さらに悪いことに、20代、海外に行って、そこに馴染んで生きていこうとしたばかりに、「外の世界に適応し過ぎて、自分の内面世界を置き去りにしてしまう」という、「グローバル人材シンドローム」に陥ってしまった。

「そうか、そうだったのか・・・」

その時、なぜ自分が、若い頃、日本を飛び出してしまったのかもわかった。
自分を「外への旅」に誘(いざな)ったのは、皮肉にも(Ironically)、自分の「内面世界」を持つための「内への旅」だったのだと。

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昨今、若手〜30代世代の「グローバル人材育成」が叫ばれているけど、気をつけなくてはいけないことは、「外の世界」への適応技術に偏りすぎず、しっかりとした「内面世界」を育んでいくことではないでしょうか。

特に、すでに上の世代よりも遥かに深い「内面世界」を持つと感じる新世代(ニュー・ジェネレーション)が、どう21世紀の社会環境の中で、「内面世界」を育んでいけるか・・・それは、日本の伝統的な自己形成論をブレイクスルーさせるだけなく、もっと普遍的な、世界につながる可能性を秘めている、と思われる。

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ヴィンチ村に戻り、ダ・ヴィンチ博物館を見学する。
そこにあったのは、彼が若い頃、デザインした精緻で科学的な発明品の数々。
恐らく当時、最先端の、突出した技術であっただろう。
その時は、つながらなかった。
(あの生家で育った彼=これらを発明した彼?・・・)

けれど、最近、リーダーシップ研修の一環で、未来ビジョン語りを聞いていて、気づいた。この世界で具現化したい「世界観」は、その人が持つ「内面世界」のプロジェクション(投影)でしかないことを・・・

もしかしたら、この世界のイノベーションとは、深い「内面世界」を持ちえた時に起きる、外の世界との共振のようなものかもしれない。

********************

ある日の事、
珍しく、自分が落ち込んでいたことがあった。
海外に来て、2ヶ月目、
ちょっとしたホームシックだったのだろうか?・・・
それとも、その環境、その仕事に馴染むために、<自分の感情を押し殺して>、<仕事は仕事と割り切って>、生きようとしていたのだろうか・・・

その時、同僚の一人が、「ハーイ」、
そう言って声を掛けて来た。

なぜかわからないけど、一瞬にして、氷解した。

今も思う。もし、その一言がなければ、今でも、自分は、ただのビジネスマシーンとして生きていたのかもしれない。

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ダ・ヴィンチ博物館を出て、素晴らしく美味しい昼食を取った後、帰路につく。
誰もいないバス停、30分待ってもバスが来る気配がない。

そこに、まるで中世の世界からやってきたような老婆(おばあさん)がやってくる。
「ここに来るバスはエンポリ駅まで行きますか?」、そう英語で声を掛けると、突然、堰を切ったような返事が返ってくる。全部イタリア語で。

全くわからないけれど、彼女のボディランゲージから、「たぶん、間違っていないだろう」、という確信を持つ。「ありがとうございます」、そう英語でお礼を言う。
けれど、なぜか、そのダ・ヴィンチ村のおばあさんの語りはとまらない。全部イタリア語で、楽しそうに語りかけてくる。

本当のグローバル人材とは、極めてエキゾチックな「内面世界」を持った人々のことなのかもしれない。

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深い「内面世界」を持つ人との出会い。
深い「内面世界」でつながった時の感動。

若い新世代(ニュー・ジェネレーション)の人達にも、その感動を味わって欲しい。

その感動の連鎖が、21世紀のルネッサンスを生むから。
いや、その感動の連鎖こそが、誰かを暗闇から救う事が出来るから。

だから、この世界の誰かに、声を掛けて欲しい、
「ハーイ」の一言でいいから -


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